「セルだと時間の経過によってどうしても色が褪せてしまうという欠点があったのですが、デジタルではそういうことが全くありませんから、クオリティを保つということでは優れていますね。結果がモニターで見るのと多少違うというのが苦労する点ではありますが。」と望月さん。 それにしても大胆な決断である。しかし、過去の常識にとらわれずそれを思い切ってやってしまうところが、ここまで常にジブリが創造的であった理由の一つなのかも知れない。あれだけ大ヒットした『もののけ姫』の次に来るのが『となりの山田くん』とは、おおかたの予想を裏切る展開だと思うが、「同じパターンを繰り返さない」というジブリが選んだのが『山田くん』だとしたら、これはあなどれない結果になるだろう。しかもデジタル化の後、初めて公開する作品である。7月の公開に向けて、まさに制作の渦中にある現場を、さっそく見せていただくことにした。
約100名のスタッフが働く制作現場に突入
ここで探検隊より「最初からコンピュータを使って作画することはないんですか?」という質問をしてみると、「それはしないですね。手で描いたものを一枚ずつスキャナーで取り込むのが基本です。」という望月氏の毅然としたお答え。こういうところにジブリならではのこだわりを感じてしまった。
続いて3階の<美術>コーナーへ移動。こちらは、がらっと雰囲気が変わり、スタッフの皆さんが紙に向かい、絵筆を使って作業している。普段はポスターカラーを使用しているそうだが、今回の『山田くん』では背景を全て水彩画で制作しているとのこと。ここで描かれた背景をデジタルカメラで撮影して合成していくのだ。どんな作品ができるのか、とても楽しみである。
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