無事撮影が終了すると映像データを等速にするため速度の遅い絵を抜くなどして改変。この作業で2、3週間はかかる。そして次に加速減速データや線路の勾配データ、信号や停止位置などのデータを2ヶ月近く費やして集める。ここで正確なデータを収集することが、実際の電車の動きの忠実な再現につながるのだ。この作業と同時に、ゲームとしてのシナリオも考え始める。得点加算方式にする、合計点で何かご褒美を出すなど、ゲームとして楽しむためのアイテムを揃える。その後、等速データを圧縮したものに走行音や電車がすれ違う音、ジョイント音などを個別に貼り付ける。そしてグラフィックで運転台のパーツをつけ、その動きに合わせて映像の動きをプログラミングすればとりあえず完成だ。そして仕上げに実際に運転し、人間の感性でチェックを加える。ブレーキの立ち上がりをどの程度遅らせれば良いか、乗車率で変わる車両総重量に応じた運転性能と走行抵抗のチェックなど、本物の電車を運転するようなリアルさを徹底的に追求する。「実際の運転士の人にもリアルさでは定評を頂いているんですよ。今回発売するTrain Simulator JR東日本山手線内回り DVD EDITION(以下、山手線DVD)は以前の作品より一層リアルになった分、運転するのは相当難しいですよ」データの緻密さに加え、徹底したリアルさの追求に隊員たちもただただびっくり。

音楽活動の拠点、スタジオ内を拝見。迫力ある生演奏を存分に楽しむ!
 音楽館の楽しさは「トレインシミュレータ」だけではない。向谷さんのミュージシャンとしての姿を拝見できるのがオフィス内の一室にある音楽スタジオ。向谷さんはその部屋を音楽活動だけではなく、企画を考えたりメールを書くなど仕事部屋として使っているとのこと。「ぜひスタジオも見せてください」とお願いすると実に快く承諾してくださった。プロのミュージシャンのスタジオに入れるなんて滅多にないチャンス、と喜ぶ隊員たち。スタジオに入るとまず目に飛び込んでくるのが4、5台はあるキーボードとPowerBook。いろんな機材がケーブルであっちこっちにつながっていてかなり複雑。しかし部屋の四方はびっしりと機材で囲まれているにも関わらず、機能的ですっきりと統一された印象。「今、ゲームソフトのテーマソングのリメイクを担当しているんですよ」と言いながら、早速出来上がった曲を聴かせてくださった。

音楽が流れ始めると鉄道の話をしていたときとは違うミュージシャンの表情で、体全体でリズムを刻む向谷さん。そしてついに隊員たちの前で実際にキーボードの演奏もしてくださった。「こんなに近くで生演奏を聴けるなんて夢みたい」と隊員たちが感激したのは言うまでもない。室内にはカシオペアが実際に使っている機材も並んでいる。その機材の上に丁重に置かれているのがPowerBook 3400。このPowerBookこそ、カシオペアが演奏で使うMIDIのデータが全て入っているという、いわばカシオペアの演奏の心臓部分ともいえるもの。「これがフリーズしたら私もフリーズしちゃいますよ」と向谷さんに言わせるこのPowerBookは、なんと特注専用ケース付き。「コンサートで移動する時にトラックで運んでも大丈夫なように、とにかく丈夫でショックを与えないような造りのケースをこれ1台のために特別に作ったんですよ(笑)」あまりに大きく頑丈なケースに向谷さんの音楽への情熱とこだわりを強く感じ、「やはりプロは違う!」と感動を新たにした隊員たち。

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