あと、映画でもビデオクリップでも、映像に関していえば自然に左右されるという苦労は多い
ですよね。
それはそうですね。イルカをモチーフにした「PeaceBlue」なんかだと、とにかくイルカの
絵を撮らなきゃならないわけですが、それは
人間の力ではどうにもならないわけですから。
そういう場合、僕はローカルゴッドにお祈りするんですよ(笑)。今日一日、いい絵を撮らせていただければ、それをビデオパッケージなり映画なり、いい作品に仕上げて、この場所に
来れない人たちにちゃんと伝えますって。そうすると不思議とイルカも集まってくるし、撮り
たい雲が現れる。
映画も同じで、例えば「SAMURAI FICTION」のときでも映画の神様に祈りましたよ。そういう気持ちってちゃんと完成した作品に現れます
からね。
お話を伺っていると、「映像」という表現方法に対する豊かな資質を、生まれながらに持って
いる方だという印象がありますが、実際にご自分の作品として映像を撮り始めたのは、いつ
頃からなんですか?
それは学校出て、会社(大阪のTV局)に入ってからですね。学生の頃は、ずっとレッド・ツェッペリンやクリームなんかのブリティッシュロックが好きで、ギター弾いてたんですけど、メジャーセブンスとか複雑なコードが押さえられなかった。馬鹿だから(笑)。周り見ると、ブルースギタリストなんかでも上手い人一杯いるし。
まあ結局、ギターというのが自分を高めていくツールになり得なかったわけだけど、ちょうどTV局に入った頃、MTVが出てきて、元々音楽好きだから、もうこれしかないじゃん、って感じで。でも仕事はトークショーとかだから、結局自分でホームビデオの機材を一式揃えて、自分の好きな絵を撮りまくってそれに自分の好きな音楽を付けるということを、ずっとやってましたね。
それは仕事以外で?
そうそう。たまたま友達に写真撮るやつとかDJなんかがいたから、自宅に集まってもらって、その友達の写真なんかも使った映像と好きな
レコードとをリアルタイムに組み合わせて面白がったりしてました。
そんなことを繰り返しているうちに、音楽で表現したいと思っていた感情とかバイブレー
ションを、ビデオカメラでサンプリングできる
ことがわかってきたっていう感じかな。映像なんだけど、音楽ができるということですね。
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最近だと、Power Macintosh G4にFireWireが
搭載されて、デジタルビデオカメラを使った
ノンリニア編集も随分身近になったから、映像を作って楽しみたいという人にはかなりいい
環境になってきましたが。
そうですね。まあ、僕の場合はモチーフを画面の中心に捉えるのが好きな、なんていうか中心好き、センターフェチで(笑)、しかも蟻んことか小さいものをセンターでずっと捉えるっていう絵を使うことも多いから、コンピュータの画面上だけで編集を済ますっていうことはあんまりないですけどね。プレビュー画面が小さ過ぎるから。
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でも、誰にでも楽しめる環境が整ってくるのはいいことだと思いますね。せっかく環境が
整ってきたんだから、細かいことにこだわらずに自分の楽しいこと、思いつきをやればいいんじゃないかな。それはオリジナルにこだわる必要はなくて、コピーでもいいわけだし、他人が観たらどうだろうということを気にする必要も
ない。例えばA、B、Cという3つのカットが
あって、それをA→B→CとつなぐのとA→C→Bとつなぐのとでは印象は違ってくるし、シーンが切り替わるときのワイプの種類を変えるだけでも意味が異なってくる。 そういうことが簡単に
できるようになったんだから、道具で遊ぶ感覚で楽しめば、もっといろんなことが見えてくるのではないかと思う。
あと、コンピュータを使ったビデオ編集で
一番いいのは、ループ(繰り返し)が簡単にできるっていうことかな。
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