アプリケーションの性能
 Power Mac G4登場時のCMを憶えている だろうか? 一台のG4を数台の戦車が囲むというものだ。かつては一部屋どころではない スペースを占拠し、数億円もするようなスー パーコンピュータの性能を数十万円の「Power Mac G4」というコンピュータが実現したと いう事を象徴するCM。
 確かにコンピュータ本体の性能は劇的に 進化し、それとともにより「高性能」がより「安価」に手に入るようになった。一昔前は「高嶺の花」だったMacintoshでさえ、当時の遥か上を行く性能を持つ機種が十万円程度で購入できてしまう。ではその性能の上に展開されるアプリケーションの世界はどれだけ身近になって いるのだろうか。従来は何人もの人間で相当の手間ひまを掛けて行っていた作業がコン ピュータ上で展開されるように、つまり一人の人間の手で行われるようになり、そういった スタイルが一般に広がった時、私たちはそれを「デスクトップ・○○」と呼んでいる。代表格がデスクトップ・パブリッシングすなわち出版のコンピュータ化と、デスクトップ・ミュー ジック、音楽の創作活動のコンピュータ化で ある。更に昨年辺りから私たちの手に届くところにまでやって来たのが、映像編集のデスク トップ化、いわゆる「デスクトップ・ビデオ」である。

従来のビデオ編集(リニア編集),実際はこれ以上に複雑になってゆく。

DVによるノンリニア編集環境の機器の構成は非常に 単純になる。
「ノンリニア」になることでSystem構成が単純化される。
当然必要な機器の数も減って行くので、セットアップもわかりやすくなる。
そのような意味でノンリニアの編集環境は実際の編集方式の変化ということだけにとどまらない意味がある。

デスクトップ=編集
 ワープロの出現は「文章を書く」という行為に大きな変化をもたらした。言うまでもなく、原稿用紙やノートに鉛筆等の筆記用具で記述する際は、一回書いてしまえば、順序の入れ 替えは不可能だった。糊とはさみで切り貼り してゆくという事はもちろん可能だが、その手間ひまは別紙に書き直すのと同じくらいの労力が必要である。ワープロはそういった文章の記述の性質に「順序を簡単に入れ替えられる」という性質を加えた。次の一句をどうするかに悩む職業作家はとにかくとしても、この性質によって私たちの日常的な文章作成はずいぶん楽になったはずである。これを「文章を書く」という「素材作成」段階と、「文章を仕上げる」という「編集」段階が融合した、と捉えることはできまいか。
 ワープロを使うのは苦手、という人はまだまだいることだろう。しかしながら、ワープロという環境が当たり前に存在するようになったことで、私たちは文章を作成するときに自然に「編集的な」視点を持つことができるようなったと考えられる。これは「文章作成」以外の行為に於いても同じことが言える。「創作行為」の中に「編集行為」的な要素が強く存在するようになったのである(優れた創作は常に不要なモノを省くという編集行為を内包しているという批判はこの際脇に置いておこう)。