今風のワンルームマンションの部屋でも、たとえば古い徳利に一輪 挿しして飾ってみれば、部屋の雰囲気が少し変わるはず。そんな骨董の楽しみ方を、多くの人に味わってほしいと語る石嶋克人氏は、東京・麹町平河町にある半蔵門ギャラリーのオーナーだ。骨董店といえば、伝統や格式、権威を重んじるという印象があるが、しかし石嶋氏は、もっと骨董を楽しんでもらう機会を増やしたいと、骨董業界としては 恐らくはじめての、大掛かりな骨董品通信販売/オークションサイトまで立ち上げた。「感性が鋭く、自分の感性を大切にするMacユーザは、実は骨董を楽しむ素質があるはず」と語る石嶋氏に、開店からサイト立ち上げに至る、半蔵門ギャラリーの“物語”を伺ってみた。

石嶋克人氏 半蔵門ギャラリーオーナー
1951年東京生まれ。大学の土木科を卒業後、土木、都市計画の仕事に18年従事したのち独立。 1990年、夫人と共に東京・麹町に喫茶店を開店。その後ギャラリーをオープンし趣味の骨董の展示などを行ったのち、4年後の1994年、半蔵門ギャラリーを開く。

石嶋克人氏が18年間勤めた都市計画関連の 会社を辞め、東京は麹町平河町に店を開いた のは、ちょうど今から10年前のことだ。  ちなみに千代田区麹町は、石嶋氏と共に店を営む奥さんの美恵子さんが生まれ育った町でもあるのだが、近代的なマンションやオフィス ビルが立ち並ぶのと同時に、かつては江戸城半蔵門前の城下町であっただけに、不思議と古風な空気も流れる土地柄である。  そこに開いた石嶋氏の店は、実は最初から現在の骨董店“半蔵門ギャラリー”ではなかった。小さなビルの一階の、どこの町にでもあるような、こじんまりとした喫茶店だったという。  残念ながら、筆者は半蔵門ギャラリーの前身である、その喫茶店を訪れたことはない。しかし、その喫茶店が、訪れる客たちに、ゆっくりと 静かに流れる時間を供していただろうことは想像できる。何故ならその店内は、古いジャズが流れる中、イギリスもののアンティークのテーブルと椅子に着き古い蕎麦猪口で珈琲の薫りを楽しんでもらうという、いってみれば今の半蔵門ギャラリーの店内と同様の空気が流れる店であったからだ。