かつて、ガムのオマケ等に付いていた立体写真や、見る角度によって画像が変化する写真を覚えている人も多いと思う。表面が透明のギザギザしていて、見る角度によって、立体に見えたり、動いて見えたり、違う画像に変わったりするものだ。このような技術を「レンチキュラー」と呼び、その技術自体は100年くらい前からあるのだそうだ。
この株式会社シーシーエーでは、そのレンチキュラーを使った印刷物を、大きなポスターやパネルにすることで、新しいコミュニケーションメディアを提案している。「レンチキュラーを使った広告メディアは、富士ゼロックスさんと共同事業という
形で、2年程前に起ち上げました。本業はビルボードの製作なんですよ。8年くらい前から、これもゼロックスさんと共同で、屋外で写真の画質を出せて、太陽の光で焼けにくい、いわゆる屋外耐光性のある特殊な素材のシートを開発しまして、それで、綺麗で長持ちして大きなビルボードや屋外用のパネル、ポスターなどを製作するビジネスをやっています。ただ、ここ2、3年で、街中にグラフィックを飾ることが普通になってきて、製作サイドが過当競争になってきたんです。そこで、ウチとしては、このレンチキュラーに目を付けて、付加価値にしようと考えたわけです。」と説明していただいた代表取締役の青山氏の横にも、後ろにも、さまざまなレンチキュラーの作例が飾ってある。中でも目を引くのは、ISSEY MIYAKEの、一見、普通のファッションポスターだが角度を変えて見ると透明になって、ポスターの向こうが透けて見えるもの。
「イッセイ・ミヤケさんが、六本木の方に新しくお店をオープンされるということで、何か目玉が欲しいという御依頼でした。店のガラス一面で、高さが2メートルくらい、横が3メートル。店内側から、表の歩道に向けてビジュアルを置きまして、人が通っていく時に、ビジュアルが見えたり隠れたりするという仕掛けです。」
昔からある技術ながら、これだけ大きいとインパクトが強い。かつては、ハガキ程度の大きさが限界だったものが、コンピューターの処理能力の増大や、大判の印刷を行うインクジェット・プロッターの解像度が高くなったことで、大きなものが作れるようになったのだそうだ。その大型化に関しては、秘密の技術が使われているそうだが、誌面でお伝えできないのが残念だ。