Eri Nakada Interview
そうですね。この建物は、築190年といわれているのですが、そんな中に置いても違和感がないところは確かに面白いと思います。そういうデザインの特性というか、佇まいがMacの魅力かもしれないですね。
図面を描くのは全部MacでCAD(Vector Works)を使ってます。あとは文章を書いたりとか、水彩で描いたイラストをスキャンして整理しておいたりとか。どちらかというと事務的な作業ですね。発想や表現に関しては、あまりコンピュータに頼らず、ローテクな、自分の手でなにかものを作ったり考えたりっていうことを大切に考えています。どちらかに偏らずに。
大学院で都市史とか建築史を研究してたんですが、そのとき町並みの調査をしていて、たまたま江戸の北の玄関として栄えた宿場町だった千住を調べる機会があったんです。ちなみに宿場町っていうのは蔵が多くて、今でも使われていることが少なくないんですが、ここも戦後住宅に改築されて、で、ちょうどその調査のときに空いてたんです。「これはしめた」と思って(笑)、借りよう、と。勢いで(笑)。
大学院を卒業するときに、担当の教授がエッセイを出されて(陣内秀信著「イタリア 小さなまちの底力」講談社)、そこでわたしのイラストを使っていただいたんです。それがイラストレーターを仕事とするきっかけになったんですが、せっかくだから出版に合わせて原画展をやろうと思って。これもやはり、勢いで。ここで個展をしてみて、私の知人、千住にお住まいの方たちといろいろな話をして気づかされることがたくさんありましたね。 私はここがとても気に入っていますが、もともと千住などの古い町に住んでいる人の中には、自分が古い町や家に暮していることを、あまり好んでいない方もいるようなんですよ。でも古いからだめ、というんじゃなくて、歴史を重ねてきた建物でも工夫次第で十分楽しく使えるよ、というように思ってくださる方もいるみたいなので、イラストと建築、という意味合いでは、自分の活動としてはいい形だったんじゃないかと思います。それもあって、年2回(5月と10月)のここでの個展は、これからもやっていこうと。
そうではないですね。自分で設計するものは、いわゆる古民家調ではなくて、どちらかというとモダンな感じですし。特に古いものだけに心惹かれる、というわけではなくて、なんでしょう、今の、現代の町並みの中に、歴史の流れを見つけられるというか、たとえば私が専門にしていた東京なら、昔お屋敷があった街道筋には今は大きなビルが立ち並んでいて、でもちょっと路地を奥に進むと全然別の世界が広がっている、たとえば庶民の生活があったりとか。そういう変化に富んだところや、そこに昔から脈々と続く都市生成の歴史の流れが感じられるという点が面白くて、建築設計から都市建築史を学ぶようになったんですね。学生の頃は、建築にまっしぐらだったんですけど、どうしてイラストレーターになっちゃったのかしら(笑)。
今年は、ですね。去年の個展を観ていただいた方から、新聞小説の挿し絵の仕事(「幸福の不等式」高任和夫作。河北新報、南日本新聞など7社に連日掲載中)をいただいて、定期的に絵の仕事をするようになったので。でも建築に関することも続けていきたいし、取り敢えずは枠に囚われず、自分に可能性のあるものにチャレンジしていきたい、という感じです。まだ絵も建築も、始めたばかりですから。
なかだえり個展 ●なかだえり水彩画展 会場:仙台/藤崎デパートギャラリー 期間:9月7日〜13日 ●千住・まち風景展・ 会場:東京/なかだえり・アトリエ 期間:10月14日〜21日(午後1時〜7時まで) 上記のお問合わせ先: nakada1@bd5.so-net.ne.jp