デジタル文化未来論

seven


松浦里佳さん
朝日新聞社 出版企画室
New Communication Project「seven」
Webディレクター
松浦里佳さん
___編集のコンセプトとして特に意識されている点はどのようなことですか。
 まずターゲットは「感覚年齢20代の男女」。自分のやりたいことを見つけきってはいないが、意欲は大いに持っているという人達が、自分の言葉で社会を、そして自分自身を語ることができるようになるためのお手伝いをしていきたいと思っています。
 テーマは20代の関心事から選んでいます。といっても、「いま知りたいもの」ではなく「知りたいが既存のメディアでは自分たちの視点でかみくだいてくれない」という素材を、わかりやすく取り上げていきます。
 また「ニュースをエンターテイメントするビジュアル紙」、「見て分かるニュース」を目指しています。外国の新聞社には「インフォメーショングラフィッカー」という職種の人がいます。これは取材内容のメモをイラストでとる専門記者で、ニューヨークタイムズやポストなどでも多いに活躍しているようですし。日本ではテレビのニュース番組で大事故などが起こったときに、現場の様子を立体模型などを使って解説しますよね。あれのグラフィック版と思っていただけたらよいかと思いますが、こういうものをふんだんに使ってわかりやすくニュースを伝えます。
 また読んでみようかな、と思わせるレイアウトも大事ですね。新聞の囲み記事は他の一般記事よりも先に読まれる、という調査結果があるんです。記事が囲まれていることで分量が予め目に見えるところが安心なのでしょう。最近の若者は45分や50分のドラマでも集中力がもたないといわれているので、集中力を途切れさせずに一気に読みきれる囲み記事的なスタイルは、積極的にとり入れています。
 さらに「セクション折り」を本格的に採用しています。「seven」はそれぞれのページがばらばらに持ち歩けるように作られています。ファッション、政治、スポーツなどひとつのテーマで1セクション、あわせて7つのセクションで構成しています。日本の新聞は幕の内弁当型スタイルというか、「ごはんはここ、たまごはここ」といったように、スタイルが予め決まってしまっています。対して「seven」はあくまでもビュッフェ形式。テレビ欄や1週間のニュースが一目で分かる新聞ダイジェストなど、ニーズの高いものは固定面になりますが、そのとき一番話題になっているのがスポーツだったら特集の3セクションともスポーツでいく。まさにビュッフェでデザートばっかり取るような感覚ですね(笑)。そして7つのセクションは、ばらばらにするとそれぞれが専門の雑誌のようになり、それらがひとつになって新聞を形成している。新聞でもなく雑誌でもないメディアを作ろうとするのではなく、新聞でもあり雑誌でもあるメディア作りこそ、今までになかった発想だと思います。
___「seven」は今後どのように展開していくのですか?
 「seven」はこれひとつで完結するのではなく、Web、テレビ、ラジオ、携帯電話などを用いた立体メディアとして展開していく予定です。メディアはそれぞれ特性が違うので本来は競合しないものだと考えています。速報性はインターネット、具体性は映像、携帯性や一覧性は新聞といったように、メディアは得意分野がそれぞれ違うので、自分にとって身近なメディアや、自分にとって必要な特性をもつメディアを選んで、そこから入ってもらえればいい、と考えています。
 現在ホームページも開設していますが、今のところはまだ紙のPRの役割しか担っていません。紙媒体があって、その後他の媒体を、となると「1ソースマルチユース」が一般的ですが、「seven」は各メディアのコラボレーションという意味での立体メディアを形成していきたいと思っているので、今後Webをどのように展開していくかはまだまだ未知数です。「seven」自体もそのときのニーズにあわせてフレキシブルに変化し続けたいと思っています。
 写真、レイアウト、そして編集に携わる者の行動など、「seven」を作る全プロセスに、意味を持たせていくことも大事だと思います。なぜこの写真がここにあるのか、なぜここにこれがあるのかなど、そういうひとつずつにこだわってこそ初めて「商品としての」新聞ができると思うんです。新聞社としての慣習や既存のスタイルに従うのではなく、自由な発想でやっていきたいですね。
 またいまはレイアウトにQuarkXpressを使ってますが、早い時期に「inDesign」に移行していきたいとも思っています。デザインもまだまだ大きく変わる可能性がありますね(笑)。
 また「seven」は若い人向けの新聞であると同時に、インフォメーショングラフィッカー、報道カメラマンなど、日本に活躍の場が少ない人の夢へのファーストステップとしても位置付けてもらいたいですね。才能と熱意のある人のチャンスの場として多いに活用してもらえれば、と思っています。
___「seven」の今後の展開を楽しみにしています。今日はありがとうございました。



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http://opendoors.asahi-np.co.jp/span/seven/
「seven」の立体メディア構想の一翼を担うWeb。紙媒体にはないWebならではの特性を活かした独自の展開を目指しているという。