____今年はSwing Out Sisterの2年振りの新譜(「Somewhere Deep In The Night」ユニバーサルインターナショナル)をプロデュースされましたね。

 そう、実はこのアルバムは、全部Macだけで作ったんですよ。「Made with Mac」です(笑)。

____でも、いかにもコンピュータだけで作った、とは聴こえませんが。

 そうでしょう? コンピュータを使うと、確かにある意味で完成度の高い、というか、表面的にきれいなサウンドを作るのは簡単ですが、かといってそれが「美しい音楽」とは限らない。やはり音楽は、感覚的なものとか、肌の質感とか、そういう要素が大事ですし。

___でも、現在ではコンピュータを使ってアナログ感とかローファイな感じをシュミレーションしたり、演出したりなどもできますよね?

 確かにそれも可能ですし、実際リスナー側ではアナログ機材で録ったのか、ハイテク機材を使ってアナログ感を演出したのかがわかりにくくはなっています。
 ただ、ひとついえるのは、私は「誰かのために」ではなく「自分たちのために」音楽を作っているということですね。つまり、マーケティング的な意味合いで、デジタル機材を駆使してサウンドを作り上げたという情報を強調したり、マーケットが求めているサウンドを作ったりというのは重要ではなく、あくまでも自分達がいいと思う、面白いと思う音楽を作るのが重要なんです。だから、音楽制作にMacを使うとか使わないとかは、あくまでもその「自分たちにとっていい音楽」を作るための手段だと思っています。

___なるほど。

 そういう意味では、プロデューサーとしてのキャリアの最初がSwing Out Sisterだったというのは幸運だったかもしれません。彼らはコマーシャル的な要素とクリエイティブな要素のバランスが優れたユニットだったので、自分たちが本当に面白いと思える音楽を、自分たちが楽しめる方法で作って、しかもそれをセールスに結び付く方向に持っていくという実験的な作業が思う存分行えましたから。そこで学んだことは、今の仕事にも役立っていると思います。

___ところで、コンピュータは最初からMacを選んだんですか?

 最初はMIDIシーケンス用にATARIとNotatorというソフトを使ってたんですが、MacがG3になったとき、たまたまNotatorの上位版のNotator Logicを使ってみたところ、MIDIシークエンスと オーディオ編集の両方ができて、しかもレスポンスがいいので乗り換えました。それから気に入って、今では新しいモデルが出る度に、これは自分にとって必要なんだ、と勝手な理由を付けて(笑)、つい買ってしまう。

___Paulさんにとって、Macの魅力とは?

 クリエイティブなことがすぐにできる、という点が一番大きな魅力ですね。あとは、Windowsを使っていると何故か70年代に逆戻りしたような気分になるのですが、Macの場合はいつも新鮮で、そんなこともありませんし。今は音楽制作だけでなく、5台のMacをインターネット用とか、旅行用とか、用途に応じて使い分けていますし、まさに「My life depends on Mac」という感じですね(笑)。

___ありがとうございました。


ポールさん最新プロデュース作
Swing Out Sister
“Somewhere Deep In The Night”
(ユニバーサルインターナショナル)