「デジカメリサーチャーになろう!」
The GOOD,The BAD and The UGLY...


収納改革とアフォーダンス
あるいは音の観察


 最近のTVで目立つのが「収納」「リフォーム」ネタ。引っ越しも改築もできない。新築マイホームなんて夢のまた夢なご時勢だから、せめて今いる部屋をもっと使いやすく美しく改善しましょうってやつね。主婦向け雑誌なんてついこないだまでガーデニング記事一色だったのに、今じゃ「収納のアイデア」がメイン。嗚呼、不景気もここに極まれり……と、ため息つくのは後ろ向き。“楽しく達成感のあるお片づけ”が、いまどきの収納なんだからサ。
 TVで活躍中のカリスマリフォーマー、収納達人(※4)の手法を観察すると、これがやはりバッドデザインとアフォーダンスに深く関っていることがわかる。人は平たいものがあると、ついその上に物を積み上げたくなるものだし、仕切りのないハンパな大きさの引き出しはごちゃごちゃ物が詰め込まれることをアフォードする。さらに生活空間には各所に盲点があり、一度大きな家具を置くと、向きを変えたり移動させるという発想が生まれにくくなる。というわけで、収納マジシャンは冷蔵庫の向きを変えるだけで使い勝手を劇的に改善するし、テレビや洗濯機の上に拡がる空間に棚を作ることで新たな収納スペースを生み出す。
 デジカメを使ったバッドデザインリサーチを応用して、ごちゃごちゃなお部屋に秩序を取り戻してみるってのもよさそう。問題のありそうな棚や物入れ、台所なんかの写真をとっておき、めでたく収納改革のあかつきには「改革後」の写真をパチリ。達成感が目に見えるからお片づけにもハリが出る。
 もちろんデジカメリサーチの観察対象は目に見えるものだけとは限らない。最近のデジカメには動画モードや音声録音機能もあるってことをお忘れなく。(※5)で取り上げた『View Masters』は、さながら「音の路上観察学会」。街で拾った面白い音をどんどん集める。その時、現場の写真も一緒に記録するってところがミソ。動画をパソコン転送してQuickTime movieとして、または音声だけ切り出してMP3でまとめたりすると簡単に“デジカメ音日記”ができちゃうのだ。音質にこだわるならDVカメラもいいね。
 さて、もう研究テーマは決まったかな? じゃあ今日から君もリサーチャー。仲間をつのって研究発表や合宿研修(飲み会および旅行)を行うとなお楽しいゾ。

※4 近藤マジックの秘密は空間認知と正しいアフォーダンスの発見にあり!
カラーボックスを金具で接続、引き出しの仕切りにビデオケースを利用……など、安価な素材で感動を呼ぶ“近藤マジック”。近藤典子先生の収納本には色々あるけど部屋別のアイデアがまとまってる「近藤典子のらくらく収納みるみる整理」(講談社)が筆者の参考書籍。思うに先生は片づかない部屋の中から誤ったアフォーダンスを暴き出し、正しい方向へ導くことでリバウンド(片づけてもすぐ散らかる)の起こりにくい収納を実現していると拝察しますが、如何? オフィシャルサイト(http://www.allmighty.co.jp/)では近藤先生の書籍、TV出演情報がゲットできて収納に関するFAQも読めるゾ。

※5 音をフレーミングするView Masters

フレーミングやトリミング次第でただのスナップ写真に新鮮な表情が生まれるように、音もだらだら録音するのではなく、写真のように切り取ってみる――関西在住のボーカリスト・アーティストのHaco(右)が提唱するView Mastersは、そんなプロジェクト。実は筆者も参加している。デジカメの動画モードやデジカメ+MDでとりためた音と絵をhtml形式の“論文”として提出したのが左の写真(野球場のアナウンスを録音)。View Mastersはリサーチャーを募集中。興味のある方はhttp://www.
japanimprov.com/viewmasters/viewmastersj/index.html
をチェック!


text by 北村祐子