That's the story of My shop
- 物語のあるお店 - 「ブッククラブ 回」
Top 2 3 4

____棚に置かれている本は、全部ブッククラブ回で選んだものなんですか?

 もちろん、全部の本を読んで選ぶというのは不可能ですが、開店当初は2000社の出版社の図書目録に目を通して、店に置く本を一冊ずつ選びました。今は出版社とのネットワークもできてきたので、かなり密にいろんな出版情報を教えていただいていますが、それでも基本的には新刊配本ではなく、欲しい本を店で選んで注文しています。

____じゃあ、ベストセラーだからといって無条件にどーんと積まれることはないと。

 はい。ただ置いたら面白いだろうと思えば、いわゆるベストセラーでも置きますけどね。

____そうした「本を選ぶ」基準はなんでしょうか?

 これは一概にはいえませんが、たとえば心理学に関連する本でも、軽めの読みやすい本ってたくさんあって、中には売れている本も少なくないですよね。ただ、そういう本の源流を辿っていくと、そのオリジナルの革命的な発想をした人の本が見つかったりする。で、その人の本は荒削りで 読みにくかったりするわけですが、すごい力を持っていることがあります。そうしたオリジナル、源流に近い本は、必ず置いておきたいと思っています。たとえば、ファーストフードやレトルト食品のようなよく研究されて口当たりのいい、でもケミカルな食べ物ではなく、畑で採れたばかりの野菜を身体で味わってほしい、という感じでしょうか。

____なるほど。たとえば夢判断の本だったら、フロイトやユングにまで遡る、とか。

 そうです。で、次に「フロイト/ユング 往復書簡集」(誠信書房)のような本を紹介して、心理学のテクニック的な側面だけでなく、フロイトやユングがどういう人だったかを読んでもらうとか。特に最近は、「本物」というと語弊があるかもしれませんが、コアな本を置く傾向がだんだん強くなってきているかもしれません。
 開店当初は、他にこういう書店がなかったこともあって、いわゆる精神世界の本をニュートラルに紹介していて、 そのうちだんだん精神世界の本が多くの書店で取り扱われるようになってきたので、マニアックで熱心な本読みばかりでないいろんな人にも、なにかに立ち止まったときに来てもらえる書店として、もう少し広い視点で本を選ぶようになった。
 そんな感じで、この店も少しずつ変わってきたわけですが、今はインターネットの普及などによって 本の情報も膨大な量が入手できるようになってきましたから、そうした情報の中でも見つけられないようなコアな本をうちの視点で選んでみよう、という時期だと思うんですね。たとえば最近だと、「嗜癖」というテーマは一般的には「依存症」を語る文脈の中で使われていますが、そうではなく、「嗜癖」というテーマが人間が解放される鍵として語られている本を置いてみるとか。

____そうした本の選び方や、棚への置き方は、ある種「お客とのコミュニケーション」の手段のひとつだといえそうですね。

 選本やディスプレイで店からのメッセージを伝えたい、という側面は、確かにあります。
ただ、店からのメッセージとか、お客さまとのコミュニケーションということでいうと、必要以上にお客さまと本の話題で話し込んだり、一種のサロン的な雰囲気を作ってしまうことは、敢えて避けるよう気を付けています。それはそれで、そうした雰囲気に馴染めない人を排除してしまうことになってしまいますから。もちろん、本に関するご質問はいくらでもお受けしますが。
 あと、開店当初はやはり情報が少ないということもあって、「精神世界の本50選」という冊子を作って、ある程度の推薦はしましたが、今はそれを一万冊を網羅した年鑑の「精神世界総カタログ」にまで広げて、そこから自由に選んでください、と。あくまでもお客さまの自主性に任せて本を選んでいただく、という姿勢ではありますね。なので、読者の考える自由度を奪うような、たとえば新興宗教やなにかの団体のプロモーションの目的が強過ぎるような本は、精神世界の分野の本として数えられるものでも、なるべく置かないようにしています。
 ちなみに、一応ブッククラブということで会員制度も設けているんですが、精神世界総カタログや 年4回の新刊情報のニューズレターなどは、会員の方に無料でご提供しています。

Top 2 3 4