●タイムマシンで時間旅行へ 時間旅行に出かけよう。秒針のついた時計と、ほんの少しのイマジネーションさえあればタイムマシンなんて簡単に作れちゃう。行き先はそうだな、人類の誕生の時代へ。 人類の誕生は紀元前700万年前だといわれている。場所はアフリカ大陸。そこからまずユーラシア大陸、つまりアジアの方へ人類が移動しはじめたのが紀元前100万年頃。さらに紀元前50万年頃にはヨーロッパへ移動している。アジアに渡った人々の中からインドネシアの島々を経由して紀元前4万年にはオーストラリアへ。寒さに耐えるだけの知恵――毛皮で衣服が作れるような技術を会得した人々がユーラシアを北へ北へと移動し紀元前2万年頃にはベーリング海峡へ至る。紀元前1万2000年頃にはついに海峡を渡って北米大陸へ人類が足を踏み入れた。 「全然実感わかないよ」――じゃあこう考えてみて。現在西暦2002年。人類誕生は、つまり700万2002年前ってことになる。2002の前に7,000,000もの時が流れていたんだ。ちょっとクラクラするね。700万年ってどれくらいの長さなのか、想像できなくても無理はない。じゃあ仮に10万年を1秒で飛ぶタイムマシンがあるとしよう。こいつにのっかると、アフリカ大陸に誕生した人類がユーラシアに移動するまで1分10秒かかることになる(7,000,000÷100,000=70秒)。しかしその後(100万年前)、現在(2002年)に至るまでの時間は、1,002,002÷100,000=10.02002だから、わずか10秒とちょっと。歴史書に詳しくあれこれ書かれているここ2000年ぐらいの時間はあっという間で目にもとまらない。それに比べれば、人間ってのはずーっと長い間アフリカ大陸にいたんだなってことが実感できちゃう。 今度はタイムマシンの目盛りをもっと細かくしてみよう。1000年単位でも100年単位でも1年刻みでも――お好みのままに。いつ、何が起こったのか。誰が何をしたのか。それを見ていくのに便利なのが「年表」というやつだね。 世の中「地図を眺めるのが好き」って人はけっこういるが、「年表ファン」もかなりの数にのぼるのではないか……ネットをぶらぶらしていると実に多彩な年表サイトがあるのに気がつく。戦国史、近代日本思想史、キリスト教史、20世紀年表、○○市の400年史、バイオテクノロジー年表、野口英世年表、おもちゃの歴史、etc.etc..。興味あるテーマの年表を見てると、いろんな発見があってワクワクしちゃう。でもきっと年表っていうのは作ってる本人が一番楽しいんじゃないかな。好きな作家や趣味の分野で気づいたことを年表にしてみる。日記のかわりに「自分史年表」を作るのもいいよね。子どもの頃は紙と色鉛筆で年表を作ったものだけど、いまならパソコンで年表づくり。できあがったらネットで公開。そしてあなたも“年表ファン”の仲間入り! ●時間を「目で見る」方法? アートを語る時「空間芸術と時間芸術」という分類が使われることがある。空間芸術とは、絵画や写真、彫刻など2次元〜3次元の空間に存在するもの。対して時間芸術は音楽、映画・映像、演劇やパフォーマンスのように、時間軸上に存在し、鑑賞するのに時間がかかるもの。前者はいわゆる「美術」なわけだが、後者は欧米の芸術大学で「Time Based Art科」を設ける学校が増えるなど、注目を浴びている。日本でもメディアアート系の学校で扱うところが多くなっているようだ。 でも、美術に“時間”を感じることもできる。巨大な絵画の展示会場、たとえばルーブル美術館に足を踏み入れた時、思わず圧倒される。目に飛び込んでくる名作の数々。この迫力の源は“時間”かもしれない。大きなキャンバスに塗り重ねられたひと筆ひと筆。絵の具が乾くのを待って、またひと筆……ひとつひとつの絵にかけられた時間を思うと、その途方のなさに頭がクラクラ。美術館で、私たちは絵画という“時間”に取り巻かれる。 写真はもっとわかりやすい。「え? 写真なんてデジカメで一瞬のうちに撮れるじゃない」という方には、カメラの原点である“ピンホールカメラ”をおすすめしたい。 ピンホールカメラ、別名「針穴写真」。古い日本家屋に育った人ならば、締め切った雨戸の節穴から朝日が差し込むと同時にふすまや壁に屋外の像が逆さにに映る現象を目にしたことがあるかもしれない。
針穴写真には露光時間が必要。おおざっぱにいって、明るい太陽光の下では30秒ほど。夜の室内照明で撮るには4〜5分、もっとかかるかもしれない。たった1枚写真を撮るのに5分以上じっと待つ。なんて悠長なのだろう。レンズ使用のカメラが一瞬を切り取る作業なら、ピンホールカメラによる撮影は、小さな針穴(ピンホール)を通して、その場の雰囲気や時間をゆっくりとフィルムに溶かし込む行為なんだ。 タイムマシンに乗ってピンホールカメラ撮影をしたら? 露光の間に何千年もの時間が過ぎ去ってしまうかもね! text by 北村祐子
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