マックフリークファイル/no 57
東京・自由が丘の駅から10分。ハーブの香りも豊かなショップで、林真一郎さんはそう言って笑った。ショップの名前はグリーンフラスコ。「グリーンフラスコ」とは、大地の「緑」と研究室を象徴する試験管「フラスコ」を組み合わせた造語だ。店内には東西のハーブ、精油を始めとして、ヒーリング系の音楽CDや書籍まで、心と体によさそうなあらゆるものが並んでいる。そして仕事帰りらしいお客さんが次々と訪れ、ハーブの香りを試したり、精油のボトルを手に取ったりしていた。
「アスピリンが発見されて、やっと100年。最新の医療なんて、たかだか20〜30年くらいのものなんです。その前はどうしていたかと言えば、自然の薬草などを使っていた。そういう植物の持っている力を、なんとか医療に使えないかと思って」薬剤師の職を投げ打ってグリーンフラスコを設立。1985年の暮れのこと。当初、周囲にはまったく理解されなかったそうだ。しかし、いまや状況は一変した。 林さんによると、70年代を境にして人と病気の関係が変わったという。医療も、それまでの「攻撃型」の治療から「予防型」のものに変化した。ベトナム戦争の影響により欧米で自然回帰思想が起こり、海辺のカフェが軒並みインド香で燻されるようになった頃のことだ。病気になってから薬でむりやり治すより、病気にならないのが一番いいという、この「予防型」の医療は、本来、東洋的な考え方であるにもかかわらず、日本では最近になってようやく見直されてきたアプローチだ。無理に西洋化してしまったが為に、日本が忘れてしまったおばあちゃんの知恵、それがやっと復活してきたのだ。 「西洋医学が、たとえば針とか灸といった、古典的な東洋医学の効能を認めて取り入れようとしている。これを統合医学と言うんですが、針や灸などの古典的な医療が、実際にも治療効果があると最新の研究で実証され、やっと認められたんです。「気のせい」ではなくて、心やからだのストレスを解消するのに劇的な効果がある。それも安全に、なんの副作用もなく。しかも現在では、世界中の研究データがインターネット上で閲覧できるようになっています。グリーンフラスコでは、アロマテラピーやメディカルハーブの研究所を自称してもいるんですが、どこかにラボがあるわけではないんです。世界が研究室みたいなものですので」 人類の災厄「テクノストレス」の撃退法は、なんとテクノロジーの向こう側にあったのである。 「通信販売もやっているんですが、以前のお客さんは私の著書を見てくれた人がほとんどだった。それがある時期から、ホームページを見て、という人が圧倒的に多くなったんです」
ショップには日常の事務処理を行うためにiBookが置かれている。Macはテクノストレスを与えにくいのだろうか、という質問に、
「かも知れない。実証はできないけど。いやホントはね、クリエーターはMacを使う、というようなイメージがあったじゃないですか。それだけの理由でMacを使っているんですけどね(笑)。ただ不思議なのは、ハーブやアロマテラピーを理解できる方と、Macのユーザって、重なるんですよ」グリーンフラスコのホームページには、現在BBSやチャットがない。だからホームページに訪れる人の間で交流があるとは考えてもみなかったのだが、どうも林さんの知らないところで、グリーンフラスコファンのネットワークが存在するらしいのだ。 「何人かのグループで来店されるお客さん同士の会話をそれとなく聞いていると、これがどうしても「オフ会」だとしか思えないんですよ。それと、きちんと統計取ったわけじゃないですけど、どうもそのお客さん達のコンピュータは、圧倒的にMacが多いみたいなんです」 Macとアロマテラピーは相性がいいというのも、なんとなくわかるような気がする。「わかるような気がする」というところがすでに、理屈を超越しちゃってますが。 text by : 石上 耕平
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