情熱や魂、個人的なリスクの要素が無いなら、ペンキが乾くのを見てる方がいいでしょう(笑)

 マーク・モリスさん/コレオグラファー(振り付け師)

クリエイティヴでありながら、調和も生み出す集団はいかにマネージメントされるのか?バレエやダンスという枠組みにとらわれず、常に新しいことに挑戦し続けてきたニューヨークの振付家マーク・モリス氏が、この度世界的なチェリスト、ヨーヨー・マ氏との共演のために初来日した。”モダン・ダンス界のモーツァルト”とも評される彼はまた、自らのダンスカンパニーを長期に渡って率いるリーダーでもある。開演直前のリハーサルを終えた彼にお話を伺った。


【プロフィール】
マーク・モリスさん / Mark Morris 1956年米国シアトル生まれ。若い時期から数多くの著名なダンス・カンパニーに出演をはたし、1980年に自らのマーク・モリス ダンス・グループ(MMDG)を組織する。自分のダンス・グループだけでなく数々のバレエ・カンパニーのために演出および振付けを行っている。1988年から1991年までは、ベルギー国立歌劇場にベジャールの後継として迎えられ、舞踊監督をつとめた。『ハード・ナット』(アメリカン・コミック仕立ての「くるみ割り人形」)、『アレグロ』、『ディドーとエネアス』などの新作を次々に発表、またミハイル・バリシニコフとホワイト・オーク・ダンス・プロジェクトを設立するなど精力的に活動を行う。MMDGは2001年のロンドンにおける活躍に対して、2度目のローレンス・オリヴィエ賞を受賞した。

----これが日本での初公演だそうですね。

私個人は何度も日本に来ているのですが、マーク・モリス ダンス・グループ(以下 MMDG)として来るのは初めてです。過去にも何度か日本での公演が実現するよう試みてはいたのですけれど、やっと来日できて、私もとても嬉しいし、みんなも喜んでいます。ニューヨークでは、よく和食を食べたりしているんです。  今回の公演は、4つの独立した演目で構成されています。まず、「アーギュメント」では、シューマンのチェロとピアノ用の曲(5つの民謡風小品)に乗せて踊ります。3つのカップルが誤解という状況を表現しています。次は「フォーリング・ダウン・ステアーズ」。バッハの無伴奏チェロ組曲第3番が演奏されます。これはもともと映像用に構成された作品で日本でも上映されました。それから僕がソロを踊ります。これは、「ペカディロス」といってサティの曲を、今回はおもちゃのピアノで演奏するんです。そして最後の大きなダンスが「V(ヴィー)」といいます。これはシューマンのピアノ五重奏曲を使っています。このダンスは比較的新しく、約1年前につくりあげたものです。これは4つの楽章に分かれていて、7人が2チーム、計14人で構成されています。タイトルは、「V」のフォーメーションが沢山でてくるということ、5人の演奏家によって曲が奏でられるということ、”V”は5を意味するということでそこからとりました。

----今回のヨーヨー・マ氏との共演をはじめ、これまでに世界中のさまざまなアーティストとコラボレーションをされています。そのような”超一流”の人々と仕事をするにあたって、どんなことを考えて作品をつくられているのですか?

 私は高いレベルで仕事をするのが好きなんです。”まあまあなレベル”には、興味がわかないのですね。本当に高い水準で仕事ができる人というのは、防衛的になったりすることも少ないし、創造性に富んでいます。だから、一緒に仕事をしやすいのです。たとえば、ヨーヨー・マさんとの仕事においては、私から、「それは早すぎる」とか「遅すぎる」とか「それは音がおかしい」などと言うことはないし、どちらかがどちらかを崇拝するような形でもありません。互いに一生懸命仕事をすることによって、二人の間に一種の理解が自然に生まれ、これが作品に生命を与えてます。こういうレベルの人でないと、ここまでの仕事はできないでしょうね。

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