マックフリークファイル

File 58

チューヤンさん /CHIU YAN:タレント

本名、謝 昭仁 1972年、香港生まれ。
1998年、日本テレビ系「進ぬ!電波少年」の企画で、アフリカ喜望峰を出発しノルウエーまで22,170km、290日に及ぶヒッチハイク旅行を敢行。
その後、日本で数々のバラエティなどに出演する デザイナーとしての手腕も高く評価されている他、近年はイベントのプロデュースも手掛ける。
9月30日より放送開始のNHK朝の連続ドラマ「まんてん」で、香港から来たパソコンに詳しい留学生という、そのまんまの役でレギュラー出演する。

「グラフィックの仕事、チャンスがあったらまたやりたい」

香港に生まれ、グラフィックデザインの仕事をする傍ら、
キャラクターが面白いからとラジオのDJも兼業。
そのまま進めば香港のカルチャーリーダーになっていたかもしれない青年が、
ある日突然遠くへ運ばれ、気がつけば見知らぬ国でテレビに出てる。
そんな不思議物語の主人公が登場。

「デザイン専門学校にいたころからグラフィックデザインの仕事してたんですよ。パンフレットとか、VISAカードのデザインとか。CDジャケットのデザインもやってたから、レコード会社のエライ人とご飯食べてたら、そこにラジオ局の人来てて“キミ、おしゃべりが面白いからラジオのDJやってみないか”って。それで午前中はラジオでしゃべって、午後はグラフィックデザインの仕事してたの。僕の番組ラジオで面白かったのはね、隠しマイクで町の怪しい情報を取材するっていうコーナー。ある日、日本で仕事しませんかっていう情報が新聞に載ってて、日本語できなくてもパスポートだけあればいいっていう仕事。怪しいでしょう(笑)。テレビ番組の仕事だって言うの。ホントかなあ!? って思って取材目的で面接受けたら、なんだかわからないけど、ボク合格しちゃった。日本に行くって言うね。でも、着いたらアフリカ喜望峰。おい、なんじゃこりゃ!!って」

 こうして、あの伝説的な旅(プロフィール参照)がスタートしたのだった。そうです。今回のゲストはタレントのチューヤン。
 チューヤンは日本ではタレントだが香港では歴としたグラフィックデザイナー。彼がMacユーザであるのも、もとはグラフィックデザインをするためだ。
 専門学校に入った頃は、自分専用のMacを買うお金なんかない。学校にさえ旧いMacが1台しかなく、生徒みんなで取り合いになるという状態。

「友達にLC2持ってる人いて、よく使わせてもらったけど、メモリは4MBだったかな? 何もできないでしょ。でもPhotoshopやりたいでしょ。ハードディスク30MBしかないだから、ハードディスクのデータを全部フロッピーディスクにコピーして、消して、Photoshopやるんですよ。すごい大変よ。」

 しかし、先生に「これからはMacを使いこなせないと、仕事がないぞ!」と言われ、とにかく参考書を買い漁って、勉強しまくった。さらにはピアニストの少年時代の物語のように、紙で自作したMacの模型で練習までした。おかげで、本物のMacが手元にないにも関わらず、学校で一番のMac通になってしまったとか。

橘さん家の卓袱台 /※公演はすでに終了
チューヤンがイラスト、デザインを手がけた、演劇ユニット「なす我儘」による公演のパンフレット

「フリーズしちゃったんだけど、どうしたらいい?って友達が電話してくるの。だから、そこをクリックして上から3番目をこうしてデータを入れてって教えてあげる。自分用のMac(※Quadra650)買ったのは、仕事始めてから1年後。でも、買ったときにはもう知らない事ってなかったから、すごいつまんない!(笑)入ってるデータわざと全部消して、もう一回入れ直したりして。」

 アフリカからヨーロッパへと縦断する旅の間は、当然Macなんてさわれない。約10ヶ月に及ぶ旅が終わって、現代社会にもどってみたら、なんとまあテクノロジーの最先端は思いもつかぬ事になっていて、ビックリの連続。

「帰ったら、Photoshopが5.0になってて、Macもすげー速くなってた。びっくり! でもまたすぐに新しい速いMacが出て、今まで速いと思ってたのに遅ーいと思っちゃう。それでまた新しいの出ると速ーいと思うけど、すぐまた遅くなっちゃう。今は昨年買ったPowerbookG3使ってるけど、ちょっと遅いかなー。新しいの欲しいなー。」

 テレビではデザイナーの顔はほとんど見せないチューヤンだが、日本でもデザインの仕事をやりたいのでは? と聞くと、こう答えてくれた。

「そう、日本でもデザインの仕事したいんだけど、日本にはデザイン関係の知り合いもいないし。それと、日本では会社の仕事以外にいろいろやるのってイメージ悪いって聞いたから。香港では、それ、素晴らしいことなんだけど。だから、マルチメディアの人になりたい、なんて言わない方がいいのかなーって思っちゃった!」

 香港では現在も名前を出さずにデザインの仕事を時々しているという。かつてのチューヤンを知る香港の仕事仲間は、日本で人気者になっているチューヤンを知らない。テレビでは可愛いキャラクターが目立つけど、実際に会って話をしてると、大人の顔も見ることができる。ニコニコとモデルを努めるが、実は写真を撮られるのは好きじゃない。でも自分で撮影するのは好きだったりする。あっちとこっちで違う顔の、なんだか不思議なチューヤンの人生。

text by : 石上 耕平

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