インターネットの接続が広く一般に普及するのに従い、ウイルス被害や架空請求など、ネットを介在した犯罪による被害も身近なものになりつつある。現在、増えてきているネット犯罪の種類、その被害を回避するための方策などについて、ハイテク犯罪対策総合センターにおける最新の状況を、警視庁広報課に質問した。


警視庁ホームページ
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/


インターネットに於ける犯罪は年々多様化の一途を辿っていると思われますが、その中でも警視庁として特に危険視しているもの、今後増えてくると思われるものなど注目すべき傾向があればお教えください。


最近のハイテク相談においては、インターネットの特徴でもある匿名性を悪用した事案に関するものが大半であり、いわゆるアダルトコンテンツ利用料並びにその遅延金や調査料と称して、架空あるいは高額・不当な料金請求メールが送りつけられるという事案や、インターネットオークションを利用して商品を落札後、代金を振り込んだ品物が届かないといった詐欺・悪質商法、また、掲示板上に住所や氏名とともに卑猥な文言や事実無根の文章を掲載するといった誹謗・中傷に関するものなどが増加傾向にあり、今後も注意を要するところである。  また、情報通信ネットワークが飛躍的に発展したことに伴い、電力、交通、金融などの重要インフラの情報システムに対して電子的攻撃を加えることにより、国民生活に混乱を生じさせる事案の発生も懸念される。


実際のネット犯罪を逐次監視するのは非常に困難なことだと思いますが、ハイテク犯罪対策総合センターでは通常業務としてどのような体制でネットを監視しているのでしょうか。


当センターでは、サイバーパトロール等によってインターネット上の有害・違法情報の収集に努めているが、具体的な方法や体制についてはお答えできない。


ハイテク犯罪電話相談受理状況を拝見すると、相談件数は時と共に大きく伸びてきているようですが、こうした相談をされる方々には、例えばネットやパソコン初心者の方が多い、携帯電話に関する被害相談は若年層が多い、といった何かしらの傾向があるのでしょうか。


初心者、性別、年齢など「人」による傾向は特にないが、インターネット接続可能な携帯電話の普及に伴って、携帯電話を利用したインターネット関連の相談は増加傾向にあると思われる。


電話相談の中から犯罪とみなされ検挙に至った実例はあるのでしょうか。ある場合、どの程度の件数になるのか、差し障りがなければ具体的な数値をお教えいただけますか。


「相談」を端緒として事件化したものについては、本年10月末までで84件であり、これはハイテク犯罪検挙の約64パーセントに当たる。


現在、相談されるものや、ハイテク犯罪として検挙されているものの大半は、ユーザー側が気を配ることで回避できるものでしょうか。回避しようのないものがあれば、それについて例を挙げていただけますか。


大半はユーザー側が十分に気をつけていれば、防止できることと思われる。問題は、被害に気づかないユーザーが多く、実際に、ホームページ改ざんの被害を受けた被害者のコンピュータを調べたところ、1年以上前から、日常的に不正アクセスが繰り返されていたり、ルートキットが置かれていたことが判明した例がある。  また、回避しにくいものとしては、一方的に送りつけられる架空請求メールの受信や誹謗・中傷がある。ただ、誹謗・中傷もネットや現実生活でのトラブル等に起因するものもあり、これについては回避できる可能性もあり、架空請求も受信者が利用事実を見極め、支払うことがなくなればすたれてくると思われる。


いわゆる不正アクセスは、日々、巧妙になってきているものと思われますが、現時点で不正アクセスによって受ける被害として具体的にどのような状況が挙げられますか。例えば、普通にインターネットに接続しているだけのユーザーのパソコンでも不正アクセスの被害で自身のコンピュータのデータが壊されてしまう可能性はあるのでしょうか。また、昨今は気軽に自分のマシンをサーバーとして用い、個人的にフリースペースレンタルサービスなどを行っているケースも多いかと思いますが、こういった人々にも「不正アクセス禁止法」での「システム管理者に対する不正アクセス行為の防御措置を講じる責務」は課されていると考えた方がよいのでしょうか。



ハイテク犯罪対策総合センター

平成12年(2000年)に設立。
コンピュータ犯罪(コンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪)、ネットワーク利用犯罪(コンピュータネットワークを手段として利用した犯罪)、不正アクセス事犯(不正アクセス禁止法に違反する行為)が対象。しかし、現実には携帯電話に関する相談も多数寄せられていることから、こちらも取扱いの対象としており、以下の3つのセクションから成り立っている。

●対策班
ハイテク相談、業界団体等の連絡窓口

●捜査班
ハイテク犯罪の捜査について警察署の支援、指導

●技術班
コンピュータの調査・解析や技術的な支援

電話による被害相談や情報提供も受け付けている。
 電話相談 03−3431−8109
 受付時間 平日 午前8時30分〜
                午後5時15分

不正アクセスによって受ける被害は、これまで、ホームページの改ざん、データ(データベース)の漏洩・改ざん・損壊、電子メールの盗み見などがあった。データといっても様々であり、顧客との契約情報や銀行の残高情報を改ざんされて、金銭的被害が発生した例もある。  攻撃者にとっては、個人のコンピュータも企業のサーバーも、ネームバリューを別にすれば、大差ないと思われる。実際、ダイヤルアップ接続であっても、接続してしばらくすればワームの攻撃を受ける。常時接続であれば、被害に遭う確率はさらに上がる。現実に、個人宅に設置されたコンピュータが不正アクセスされる被害も発生しているから、個人ユーザーであっても、不正アクセスされデータを壊されてしまう可能性は十分にあり得る。  インターネットの世界では、ネットに接続する全ての人々が、それぞれの立場でセキュリティを高め、不正アクセスを防止することが重要である。例え個人であっても、インターネットを構成する一員には違いない。いわゆる「踏み台」となって、多くのユーザーに迷惑をかけることを考えれば、個人といえども、アクセス管理者として防御措置を講ずるように努力していただきたい。


「知らないうちに料金が請求されたなどの金銭的トラブル」「嫌がらせ、ストーキングに近い精神的トラブル」「ウイルスやハッキングによる物理的トラブル」など、身近なインターネットでのトラブルが、どこまで犯罪として警察で扱ってもらえるのでしょうか、また、自分でできる対応策にはどのようなものがあるのでしょうか。


従来からの犯罪が、インターネットを利用しての犯行に移行しているものが増加しており、これら犯罪は全て警察で取り扱います。また、自分でできる対応策としては、ネット利用上のルール、マナーを守るほか、個人情報をネット上にさらさないことやセキュリティ対策を講じることなどが重要である。




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