デジタル文化未来論

「そこには、躍動感、静かな感じ、時間の中で呼吸と同時に表現できるものがあるんです。」

ハシモトさん CDーR

人間の内にある想像や感覚の世界。かつて作家や画家や音楽家達はそれを外の世界にいかに出現させるかということに苦心を重ねた。やがて映画が発明され、それに時間という要素が加わった。今やテクノロジーが一人の作家の個の世界と外界とを結ぶ橋渡しの役割を担いだしている。今回のデジタル文化未来論では、独特のやわらかいビジュアルで、独自の世界観を描き出すCGアーティスト、ハシモトミカさんにお話をうかがった。

 ハシモトさんは、大学で映像を専攻されたと聞いております。表現としてコンピュータをお使いになるようになったきっかけは?

 大学に入学した時は、グラフィックデザイン科だったんです。自分が、表現者として何かやりたいという気持ちはずっとあったんですが、それがどんなもので、素材が何が一番自分にぴったりくるかという点ではすぐに映像には結びつかなかったんですね。学生の時も課題制作をちゃんとやるよりも、ジャズ研に入って音楽に夢中になったりで、まじめにはやっていなかったんですが、自分の持っているものをオリジナルな形で出せるものが何かあるだろう、とずっと探していました。絵本を読むのも好きだったし、音楽も好きだったし。結局、卒業制作で16ミリのアニメーションを作ったのが、そういう表現を形にしたはじまりでした。その作品は、そのころ好きだったジャズのように、ストーリーのない、今よりももっと抽象的なものだったんですけれど、これを作っている時、やっと他の人とは違う自分らしさみたいな手応えがあった。それで、おもちゃ会社に就職は決まっていたんですけれど、結局それはやめて、大学に残って映像を少し作ってみようと思ったのがコンピュータにさわったきっかけだったんです。大学の研究室でマックに出会って、それまで紙に一枚ずつ描いたり、コラージュしていたものを、フォトショップを使えばアニメーションももっと簡単にできるな、と思って。



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