暗号化とスペクトラム拡散
AirPortが実際にどうなっているかは、執筆時は発売前でもあり、実物がないのでわからないが、電波的にはスペクトラム拡散という方式を使っているはずだ。現在1Mbps程度から11Mbps程度のものが手の届きやすい価格で販売されている。AirPortでは、11Mbpsのものを採用しているから、このタイプの価格も劇的に下がるはずである。
 スペクトラム拡散は、周辺ノイズに対して影響を受けにくく、高速で、周波数帯域の色々な部分をデータに応じて使用するため、データのある周波数が移り変わり、その追従が非常に難しいという面で、のぞき見を防止している。また、これまでと同じパターンだとするならば、端末であるiBookを、ハブの役目をするAirPortベースステーションに対して端末登録する。その際、端末に固有の暗号化キーで端末とハブの間のデータは暗号化されるようになるのだ。もちろん、暗号化キーは端末には出てこないし入力の必要もないのが普通だ。また、無線LANインターフェースが一種のネットワークカードである以上、MAC(※)アドレスというネットワークカードに固有の番号が振ってあるので、それで識別も できるし、なりすまし通信を防止することができるようになっている。
 このような方式で通信しているわけだが、データによってさまざまな周波数帯を使用するため、その間には複数の端末のデータが存在できる。また、エラー訂正機能も当然内包しているため、電波通信中にエラーがあった場合でも修復、再送等の手続きが取れる。方式は違うが、PHSとホームステーションが複数端末を同時に操れたり、PHSや携帯電話のアンテナが複数端末をさばけ、なおかつ他人の通信が聞こえるわけでもない、というのに似ている。直接的な方式は違うが、考え方は似ているということだろう。


無線のもたらすメリット
さて、みなさんもすでにご存じのことと思うが、AirPortは、デスクトップMacにも増設可能 だということである。デスクトップMacは、据え置いて使うものであり、ケーブルを張ればいいのである。では、なぜ、デスクトップMacにもワイヤレス、なのか。
 LANを実際に構築しているみなさんは、その理由はすぐにわかるのではないだろうか。10Base-Tのケーブルは案外固い。ちょっとした模様替えなどをしたら、新しい長さのLANケーブルが必要になった、なんてことはよくある話なのだ。かといって、最初から5m、10mといったケーブルを買っては、ただでさえぐちゃぐちゃな背面は想像を絶する状態になることは容易に想像がつくはずだ。これが一本でも減ることは非常なメリットだ。模様替えや机上のちょっとした移動でもメリットがあることだ。
 ましてや、モバイルのiBookならなおさらだ。バッテリで動くiBookは、あらゆる場所に持ち 運ぶことが可能だからだ。例えば、PowerBookをカード型PHSでインターネットにつないだ時のような感覚にその数百倍のスピードが加わるわけである。社内のどこでも社内LANにつなげたり、家庭内のどこでもインターネットできたりするというのはどんなに気分がいいことだろうか。いや、実は社内や家庭内には限らない。ごく限られたことではあるが、家のとなりに喫茶店などがあった場合、そこからでも通信できる。屋内で30〜50m、屋外の障害物がない場所では100〜150m程度通信が可能になっているのだ。壁も数枚なら楽勝で通るため、マンションで数個ベースユニットを設置してあれば、マンション全体でLANを利用できる、なんてこともあるわけだ。LANケーブルがない、ということの既成概念への破壊力、わかってもらえただろうか。
image 無線、つまりケーブルがないということは、時と場所を選ばずどこでもあたりまえにつながるということだ。 image


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