予告編で見たシーンが本編にはない?!邦画の予告編の制作方法にその秘密あり!
    さてここで改めて「予告編とは何か」を教えて頂こう。予告編には劇場用・テレビ用・ラジオ用、そして予告編よりやや長めのプロモーションクリップなどがある。劇場の予告は「特報1・特報2・公開前1カ月から1番組前頃に流す予告編」等がある。「特報はタイトルやコピーだけで、ほとんどいいところは見せない。だいたい30秒ぐらいのもので、本編が大作の場合は、その後に少しだけ内容を入れた特報2を作るんです。そして公開が迫ると90秒から120秒の予告を流します。これを15秒とか30秒に縮めたものがテレビで流れるテレビスポット。基本的には15秒で1タイプ作りますが、例えば月曜日はみんなブルーだから元気が出るようなタイプをとか曜日によって流すものを変えたり、ひとつの作品で切り口が違うものを何タイプも作ることもありますね」。
 また洋画と邦画では予告編の作り方はかなり異なる。「洋画の場合、アメリカで作った予告編があるので、それが面白ければスーパーを入れたりするだけでOK。でもつまらない場合は日本人向けに変える必要がある。アクションものやSFXは、日本人も外国人もそう好みに差はないが、コメディーや人情ものは大きくキモがずれるんです。だから洋画の場合はどのセリフが誰に受けるかといった違いや、向こうと日本での役者の知名度の差などが予告編作りのポイントになりますね」。
 対して邦画の場合は予告編の制作と本編の撮影は同時に進行するため、まず台本を入手して、撮影スケジュールを確認することから始まる。「本編が未完成な状態で予告編は作るので、一番おいしいシーンがまだ撮影されていないことも多いんです。でも撮影を待っていたらこっちは間に合わないので、どうしても欲しいシーンはオーダーを出します。だから本編にはないシーンが予告編に入ることもある(笑)。映画は150シーンあるとすれば600カットぐらい撮っているんです。これを全部粗つなぎしたものを編集ラッシュと呼びますが、この状態では最終的には1時間40分の映画でも3時間ぐらいの長さがあります。これを監督や配給元、プロデューサーが切っていくんです。個人的には3時間のものが2時間台ぐらいになったころが一番映画としては面白いと思うんですが、あまり長い映画は嫌われるのでどんどんカットされていく。だから編集ラッシュを見て予告編を作るとカットされるたびに予告編に入れたものがどんどんなくなっていくんです(笑)」。  邦画の場合、制作課程で流動的な要素が多いうえ、プロデューサー・監督・スタッフ・宣伝の担当者など多くの人との交渉が必要なので、洋画に比べてはるかに労力を費やす。「でも邦画の方が映画を作るスタッフの一員になれる楽しさを味わえると思いますね」。
 予告編の長さには決まりはないが「3分を越えると休憩時間が短くなるので観客に嫌がられる。私自身は100秒ぐらいが言いたいことも全て言えて好きですね。90秒だと少し辛いかな」。また予告編制作で大切なのは「自分の世界にならないこと。常に見る方の立場にたつこと」という。


制作現場はMacをフル活用。タイトル入れにはアナログ的手法も健在。

 いよいよ予告編の制作方法についてうかがおう。「いまはMac1台あればほとんどのことはできてしまうんです。3年ほど前からMedia100という編集ソフトを使ってノンリニア編集を行っています。今まではフィルムの切り貼りで作ったり、ビデオを使って編集していましたが、今はMedia100で必要な絵をデジタルに変換してハードディスクに取り込み、そこからデータを引っ張り出してラフ編集するという方法で制作しています。デジタルは画質が良くて劣化しないところが魅力ですよね」。  予告編には欠かせないタイトルなどの文字を入れる方法はアナログ的な方法とデジタルの2つを用途に応じて使い分けているという。
「映像が透けて見えるような白文字は、透明フィルムに1コマずつ撮るんです。専門の業者がいるのでレイアウトを書いて発注するだけだからこれは楽で簡単。映画の後に流れるスタッフの名前などを書いたエンドロールは、今でもこの方法で作っていて、会議室の机ぐらいの長い紙焼きを1コマずつ送って撮っていますよ。デジタルで作るとクオリティは上がるし3Dなども使えるんですが、まだまだレンダリングに時間がかかってしまうのが現状ですね」。
 ここで実際に業者に発注するタイトルのレイアウトや、板垣さんがこれまで手がけてこられてた作品のビデオを拝見。「もののけ姫」、「のど自慢」、「黒い家」、「恋におちたシェークスピア」など、テレビでもよく目にした予告編が次々流れる。お話をうかがった後に予告編を見ると、タイトルの入れ方ひとつにもさまざまな発想や工夫が感じ取れる。予告編の奥の深さを垣間見た思いの隊員たちだった。



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