日本画、というと、つい花鳥風月の世界を思い浮かべてしまうが、実はその表現の幅は広い。たとえば今回ご紹介する熊川みのりさんの場合、建築物などの人工的なものが変化して行く時間の流れや、その光景に差す光といった独自のモチーフを伝統的な画材で表現している。最近ではMacも「画材」のひとつとして用いるようになったという熊川さんに、お話を伺ってみた。

Macを使い始めたきっかけは?
一番最初は、やはり絵の制作に使ってみた かったからですね
。普段は岩絵の具を使った、 日本画の範疇に入る絵を描いているわけで すが、それとはアプローチの違った、たとえば 写真を加工してコラージュするようなものもMacだったら簡単に作れるのではないかと考えた のが、きっかけだったと思います。


Macが最初のコンピュータだったのですか?
そうですね。以前勤めていた会社でちょっとMacに触ったことがあったのと、ほかに知らないので(笑)、迷わずMacを買った、という感じ です。今使っているB&WのG3を買って、 ようやく一年が過ぎましたが、コンピュータを 使うのがほとんど初めてでもとても入りやす かったし、なにかトラブルがあった場合でも 自分一人で解決できること が多かった。今はWindowsにもあまり抵抗はありませんが、最初からWindowsだったらここまで馴染めなかった かもしれませんね。

Minori Kumakawa
熊川 みのり
日本画家 1971年東京生まれ
東京芸術大学で日本画を専攻の
のち、大学院(修士過程)でも
日本画を学ぶ。
在学中から銀座ギャラリーミキ
('94年)、日本橋オンワードギ
ャラリー('96年)、銀座松坂屋
('96〜'99年)などグループ展
等の活動を行ってきたが、この6
月、銀座ガレリア・グラフィカ
bisにて初の個展を予定。
現在はその準備に追われている。
伝統的な手法を用いる日本画の制作と、 コンピュータによる作画の両方を行っていると、 戸惑ったりすることはありませんか?
 確かにコンピュータで写真のコラージュ などを行っていると、何度でもやり直しが利く ので完成イメージを見失ってしまうという話も 時々耳にしますが、私の場合は特にそういった デジタルならではの戸惑いというのはないで すね。そもそも元に戻るなどマイナスの作業は、 日本画を描く場合にもあまりないですし、絵を 作っているうちにその作品が「もうこれで終わり」といってくれるのがわかりますので。もっとも それは、描いている最中だったり、ちょっと時間を置いてからだったりと、さまざまですが。それに、日本画の場合も水が乾くまでどんな結果になるかわからないなど偶然性との闘いという 側面もあるので、たとえばPhotoshopを使って いて、いうことを聞いてくれない、思った通りの結果になってくれないといった偶然性も、意外に楽しむことができました。  それよりも、日本画を描く上でのフラスト レーションを解消してくれたというメリットの ほうを、Macを使うようになって強く感じています。
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