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中野裕之氏といえば、日本の映像アーティストと
して間違いなく最も活躍している人物だ。仮にその名前を知らなくても、多少音楽に興味のある読者
なら、その作品をきっと目にしていることと思う。例えばTVの
音楽ランキング番組で流れるビデオクリップにも、GLAYの
「誘惑」はじめ中野氏の手掛けた作品がトップ10入りしていることは少なくない。その一方で、イルカや雲、森などの自然を
モチーフにした「ピースな」オリジナルビデオ作品も多数
リリースしているし、ビデオドラッグの先駆け的な作品もあればお笑い映像作家としての評価も高い。
さらには長編映画「SAMURAI FICTION」も手掛けている
など、ジャンルを飛び越えた活動は、映像作家としては実に
稀有な存在だといえる。その中野氏に、ご自分と映像との
関わり合いや、幅広いフィールドで活躍するフットワークの軽さの秘密などについて、お話を伺った。
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1958年、広島県出身。早稲田大学卒業後大阪のTV局に5年勤務したのち独立。93年にピースデリック・スタジオを設立。DEEE-LITEのビデオクリップでMTV
アワード6部門にノミネートされたほか、Mr.Chirdren、今井美樹、布袋寅泰、GLAYなど著名音楽アーティストのビデオクリップを手掛ける。また加えて、
幅広い作品を世に送り出している。1998年には初の長編映画「SAMURAI FICTTION」を公開した。

中野さんは、ミュージッククリップを撮ったり、「ピースもの」と呼ばれている自然をモチーフにした映像を撮ったり、あるいは「SAMURAI FICTION」で新感覚の長編時代劇映画に挑戦
したりと、「映像」というフィールドで幅の広い
仕事を手掛けられてますが、そのフットワークの軽さはどこから来るのでしょう?
まずひとつは好奇心ということなんだけど、それに加えて自分が「観る人」だということ
ですね。自分自身が「観たい人」なんですよ。
やっぱり、観たことのない映像を観たいし、
こういう映像は観たことがないぞ、と思ったら、自分で撮りたくなる。それが映画に向いていれば映画になるし、別の形になることもあるし、
という感じです。
でも、一口に「映像」といっても、現場レベルで考えるといろんな仕事の仕方、方法がありますよね? 特に映画は制作作法みたいなものが
厳しそうに思うのですが、その辺、対応するのに苦労したりはしませんか?
確かに、例えば部屋の中で主人がいて、その娘がいて、主客がいるとすると、古くから映画に携わっている人にとっては画面の中でのそれ
ぞれの位置は決まったものになっている。でも自分の撮りたい絵はそうじゃないから、それとは違う絵を撮ろうとすると、カメラマンから「映画はそうじゃない」という反論が出て、2時間くらいその議論に費やすという場合もあります。
でも、それはあくまでも「いいものを作りたい」ということでの議論だから、いってみれば
些細なことだし、苦ではないですね。むしろ、
それを苦労と考えるよりも、だったら取り敢えず自分でそういう絵を実際に作ってみて、それを見せて、「いや、それだったら俺が作ったほうがもっといいものができるぜ」っていってもら
えるような風に持っていくとか、前向きに実現させていったほうがやってて楽しいですしね。
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