基本は「自分が見て楽しいものを作る」ということですね。
流行りとか、他人の目に媚びずに作ったものが面白がって もらえれば、そっちのほうがずっと嬉しいですから。

CGやPhotoshopでのコラージュを用い、独特の美の世界を写真で表現する所幸則氏。 本の装釘から広告、CDジャケットの制作などに加え、オリジナルの写真集も4冊を数えるし、ゲームの監督もこなすなど、その活動の幅は広い。 そんな所氏に、コンピュータ/Macintoshとの出会いや今後の活動について、お話を伺った。


所さんといえば、作品の制作過程にMacin tosh/Photoshopでのコラージュを取り 入れた先駆者という印象があります。

 それがそうでもないんですよ(笑)。
まあ、確かにMacintoshを使い始めたのはちょうどII fxが出たときで、もう10年も前になるから、買ったのはかなり早い時期ではありますが。ちなみにそのとき、II fxとII ciとSE/30の3台を一度に買ったんですが、 これは写真に合成するCGを制作するため。Macintosh用の3D CGソフト「Shade」が出たので、導入したというわけです。
Yukinori Tokoro
所幸則さん

写真家 1961年香川県生まれ
大阪芸術大学写真科で学んだのち、1984年に上京。フリーの写真家として活動を開始する。エアブラシやCGを取り入れた作風が注目を集め、日本だけでなく、フランスやドイツなど海外でも高い評価を得る。この5月、4冊目となるオリジナル写真集「ワクワクの木」(アゴスト)を、所氏が敬愛する 羽良多平吉氏の装釘で上梓。
そのとき、Photoshopはお使いではなかったんですか?

 かなり初期から一応使ってはいましたが、解像度的な面で写真のコラージュに全面的に用いるには、当時はまだPhotoshopもMacintosh自体も、力不足だったんですね。元々作品制作にコンピュータを導入したのは、自分の撮った写真をエアブラシで加工するという手法の延長として、CGでオブジェクトを作ってフィルムに出力するのが目的でしたし。
 だから、「Shade」が出る以前はNECのPC-98でCGを制作していました。そっちのほうが安かったし(笑)。Macintoshは単純に形がカッコよくて、気になる存在では ありましたが、いかんせんグラフィックで使うには環境が整っていなかったし、なにしろ高かったですから。  で、CGをフィルムに出力したものを、撮影した写真にアナログ的に合成していたわけですが、実際、1993年に出した最初の写真集(「YUKINORI TOKORO」用美社)も、よく「Photoshopを駆使して制作」と思われがちですが、実はPhotoshopを使った作品は 少なくて、エアブラシを使った作品がほとんどです。さすがに今は、制作過程のほとんどはコンピュータに移行してますけどね。