今さんが現在製作中の長編アニメーション作品『千年女優』

Macを使い始めたことで漫画やアニメーションの制作過程で、どのような変化が起こりましたか?

 コンピュータを使いだしてから、まず発想の段階で「こういう絵を描きたい」と思ったときに「素材としてこれとこれは別々にした方が後で加工しやすい」というように考えるようになりましたね。手描きで素材を作って後でコン ピュータでコラージュするという感覚になってきたような気がします。ただ、手描きの味わいというものがあ
るので、私自身はパソコンで1から描くという段階には 移行できないでい ます。自分自身はパソコンの中で描いたものが 編集されていくという感覚が好きですね。  アニメーションや漫画、イラストでもパソコンの普及によって様々な変化や可能性が 出てきたにもかかわらず、同じ様な絵が巷に溢れているように思います。長い時間をかけないと到達できなかった技術がパソコンに よって容易に獲得できるようになった今こそ、どういうイメージのためにその技術を使うかがシビアに問われないといけないはずなんです。一見して「上手いな」と思える作品でも、パソコンという道具にのまれて同じような作品ばかりになってしまうのは、見ていて不気味な感じですね。描けるということと何を描きたいかは別のことであって、ツールの進歩と同時に発想も豊かにならないといけないと思いますね。

現在制作されているアニメーション映画「千年女優」のみどころを教えてください。

 ストーリーは端的に言うと、元女優だった おばあさんが語る一代記。語っているうちに 実際の話とかつて彼女が出演した映画の話が交錯していき、時代も戦国時代、幕末、明治から現代、果ては未来までと様々な時代を 駆け抜けていきます。いろんな嘘を集めて コラージュしたものの中に主人公の「本当の 何か」が浮かび上がってくれば、という想いを込め、10月頃の完成を目指して制作中です。  パソコンもいろんなアプリケーションを使いこなせるようにマスターしたいのですが、 なかなか時間がとれなくて思うようにいかないのが残念ですね(笑)。ホームページも読者からの反響が直接届くのでとても楽しいので すが、時間がなくてなかなか更新できない というのが現状です。

「千年女優」の完成を心から楽しみにしてい ます。今日はとてもお忙しいなか、本当にありがとうございました。



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