東京都新宿区西早稲田2-16-17 NKビル1F Tel:03-3203-4489
http://www.mozz.net/ mail adress:info@mozz.net


西早稲田にあるジャズバー。初代オーナーが”MOZZ”という名前でジャズ喫茶を開いたときから数えればかれこれ40年の歴史を持つというから、 日本のジャズ喫茶/バーの中では最古の部類に入る。現オーナーの橋本邦彦氏は、アパレルメーカー勤務後、6年前に旧知の三代めオーナーから この店を引き継いだ。店内には20台のオールドMacが置かれ、店を訪れるお客ばかりでなく店のホームページの掲示板上でも、夜毎音楽とMacに 関する会話が交わされている。ちなみに店にあるレコードは、アナログ、CD併せて約3500枚。その中から新旧問わず様々なジャズはじめ、いろんな ジャンルの音楽がかけられるが、橋本氏ご自身は大のジャコ・パストリアス フリークで、ジャコのレコードは一日一回はかかるとのこと。また毎月一回、常連客のプロのジャズミュージシャンによるライブ演奏も行われる。


Autumn in N.W.

 10月初旬の小雨模様の午後、「ニューヨークの秋」ならぬ秋の西早稲田に、ジャズバーMOZZを訪れた。

MOZZは、高田馬場から早稲田通りを早稲田方面に向かい、明治通りを越えてちょっと いった右手にある。表通りからは少し奥に 入ったところだが、ニューヨークの街角にでもありそうな佇まいは、少し注意して歩いていればすぐ目に止まると思う。MODERN JAZZと大書きされた廂と、ウィンドウを飾るMOZZのネオンが目印だ。
「僕がMOZZに通っていたのは、まだ学生の頃だから、もう20年くらい前ですね。MOZZは早稲田のモダンジャズ研究会とか、現代ジャズ愛好会の溜まり場だったんですよ。僕は現代ジャズ愛好会に入ってたんで、先輩に連れられて来て、当時はあまり聴いていなかった4ビートジャズを嫌というほど啓蒙されたりしてました(笑)」
ちなみにその当時のMOZZは、現在の場所からもう少し早稲田寄りの、グランド坂と呼ばれる坂と早稲田通りがぶつかる角の八百屋の 2階にあった老舗ジャズ喫茶で、三代めのオーナーである「名物ママ」が切り盛りしており、コメディアンのタモリ、俳優の風間杜夫、 ジャズギタリストの増尾好秋ら今をときめく有名人が、才気溢れる青春時代を過ごして いたりもしていたそうだが、
「学校を出て会社に就職して、随分経ってからものすごい久し振りに“まだあるかな”と 思ってMOZZに行ってみたんですよ。そしたら店はあったんですけど、かなり寂れた感じになっていた。で、ママと話をしていたら、 もう少し大人向けの、お酒も呑める店にして、もう一花咲かせたいね、っていう。僕もそろそろ、当時やってたファッションの仕事じゃなくて何か別のことをやりたいと思い始めてたときだったんで、じゃあ、MOZZの再生に 協力してみようかな、と」
6年前、橋本氏が四代めのオーナーと して、店を今の場所に移し、MOZZを引き継ぐことになったわけだ。
「ジャズ喫茶って、口を利いちゃいけない、話をするとすれば難解で激しい議論みたいなイメージがありますけど、MOZZはそんなことはなくて、割とオープンだった。僕が通ってた頃も、一応 メインはモダンとかビ・バップとかフリージャズ だったけど、僕が持って行った、ウェザー・リポートなんかの当時の流行りのフュージョンのレコードもかけてくれましたしね。もっとも、先輩方にはかなり顰蹙を買ってましたけど(笑)」
「当時はもちろん携帯電話もないし、家に電話 持ってる学生もほとんどいなかったから、一種の連絡場所としても機能してたんですよ。その日 一回珈琲頼めば、あとは何度でも出入り自由 だったんで、酒の相手や麻雀の相手見つけるのに何度も顔を出したり。今は学生でもみんな携帯 電話持ってるから、そういういわゆる“喫茶店文化”みたいなものは役割を終えたと思うんだけど、 そうしたオープンな雰囲気は、もうちょっと大人っぽい感じで、今のMOZZにもあるんじゃないかな」
MOZZを訪れればすぐに気が付くと思うが、店の奥には512KからQuadra 800まで、歴代のMacintoshがずらりと並んでいる。
「MOZZは、もちろんお酒と音楽が売り物なんですが、それにこいつら(Mac)が加わると、結構 お客さん同士の話が弾むんですよね。元々音楽関係のお客さんとか、近所に出版関係者が多い所為かグラフィックデザイナーのお客さんも多いので、自然にMacユーザの比率も高くなるし。 だから、放っておいてもお客さん同士、すぐに 仲良くなってしまう。さすがに女の人でひとりで来て、他のお客さんと仲良くなるっていう強者は、残念ながら少ないですけど(笑)」
忘れないうちに付け加えておくと、ジャズ バーとはいえ、MOZZはかかる音楽もジャンルにこだわらない。
「あんまり“ジャズかくあるべし”みたいなのは 好きじゃないんです。むしろ反対に、“ここでかかっ てれば全部ジャズだ”っていって、好きなのかけてますけど(笑)。混んでるときのフリージャズの激しいやつなんかは、ご遠慮いただくことはありますが、基本的にリクエストも歓迎してますよ」
ジャズと音楽と酒が好きなら、はじめて訪れても誰でも気軽に楽しめるバー、それがMOZZだ。