ついに登場したMac OS X。まったく新しいOSだけに、急いでアップデートしないという声も聞かれる。しかし、Mac OS Xのリリースは、コンピューティング環境の将来像の具現化の第一歩であるという点で、機能性や操作性の直接的な向上を主とする従来の一般的なOSのアップデートとは、意味合いを異にするものではなかろうか。
 本特集では、まずMac OS Xの存在意義を再検討し、この大きなアップデートの意味を再確認してみたい。
 また、読者のみなさんがより安全に、実用的にMac OS Xを使い始めることができるようないくつかのノウハウも併せて紹介するので、ぜひ実際にMac OS Xを使って、その存在意義や可能性について考えを進めるきっかけにしていただきたいと思う

▼目次
・ユーザーはどのようにMac OS Xと向き合うべきか 1
ユーザーはどのようにMac OS Xと向き合うべきか 2
Mac OS Xを即、実用的に使うために 1
Mac OS Xを即、実用的に使うために 2
Mac OS Xのインストール 1
Mac OS Xのインストール 2


〜ユーザはどのようにMac OS Xと向き合うべきか〜

Mac OS Xはすぐ導入すべきか?

 去る3月25日、ついに新しいMac OSであるMac OS Xの製品版がリリースされた。ユーザはすべからく、ただちにMac OS Xに移行すべきかどうかは以下の点を踏まえて検討して欲しい。

 その理由は、UNIXベースのまったく新しいアーキテクチャにネイティブ対応したCarbonアプリケーションがまだまだ非常に少ない点(既にリリースされているものもあるが、ほとんどはベータバージョン)、周辺機器のサポートに乏しい点(現時点では、DVDやDVD-RAM、CD-R/RWの利用は行えない)、G3以上のマシンで十分なメモリがないと動作速度が実用的なレベルではない点、新しいアーキテクチャを採用した故の操作性の変貌、そしてなによりも、ゼロから作り直したまったく新しいOS(可能性も問題点も未知数)といった点などだ。

 また、たとえばウィンドウ内をリスト表示にする際、表示項目にラベルを含めることができるのは従来どおりだが、ラベルを設定する機能が見当たらないなど、今までのOSと同じ使い勝手の点で欲しい機能があったり、その操作にも慣れが必要な点だ。つまり、順当に考えれば、Mac OS Xに移行するには、多少の覚悟が必要だといってもよいだろう。


Mac OS Xの意味は
従来のOSアップデートとは異なる


 それでもMac OS Xは、次世代を見据えたAppleの1つの解答として、もしハードディスクにある程度の余裕があり、環境構築をする時間があるのであれば、製品版リリースを機にMac OS Xを試してみることを、ぜひお薦めしたい。つまり、現在のMac OS Xの存在価値は、より快適な環境を手に入れること、ではなく、未来のコンピューティング環境を先取りすること、であるからだ。

 その意味で、Mac OS X製品版のリリースは、たとえばMac OS 8から9とか、あるいは9.0.4から9.1とか、またあるいはWindows 98からMEへといった、従来のすべてのOSアップデートとは意味合いが異なる。もし読者のあなたがMacを実用的な、自分のやりたいことを効率的にこなすための道具としてだけ考えているのなら、先にも述べたとおり今慌ててMac OS Xを使い始める必要はないわけだが、しかし、Macを使うということは、ある意味コンピュータの将来像を先に体験するということではなかったか。

 それはたとえば、アイコン、ウインドウ、マウス操作によるGUI環境の実現〜コンピューティング環境の一般化の先取りであったり、画面で見たままの結果が印刷できるWYSIWYG(ウィズウィグ)の採用によるデスクトップパブリッシングの普及であったり、QuickTimeによるデジタル動画/オーディオ利用の簡便化であったり、あるいは(今はなくなってしまったが)NewtonによるPDAの実現化であったりして来たわけだが、こうした「先進的」といってもよいだろう新しい発想による試みは、改めて述べるまでもなく、最初は決して完成されたものではなかった。

 完成されたものではなかったが、しかし、その結果は「現在」にある。上で例示したAppleの「それまでになかった」発想は、その多くが現在実用的な技術として普及していることは、読者のみなさんがよくご存知だろう。


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