リンククラブ探検隊

幻冬舎編




幻冬舎の茅原さんと記念撮影。
どうもありがとうございました。



本は、著者が書いて、出版社が出版する。しかし、著者が書いたものが本という形になるまでには、編集者や印刷所などの膨大な労力が介在していることは、あまり知られていない。今回、探検隊は幻冬舎という出版社を訪ねて、本がどのように出来上がるのかを見せてもらうことにした。その過程を見せてくれるのは、最近、イラストレーターの326(=ナカムラミツル)氏の作品集を編集した茅原さん。彼の奮闘ぶりと、作品集がどのような過程で出来上がっていくのかを通して、本というものを見直してみようと思う。



 極端な夏の日差しの中、探検隊一行が訪れたのは、小さなマンションのような建物。出版社というには、かなりカジュアルな感じのオフィスである。出迎えてくれたのは、326氏の作品集などを手がける編集者の茅原秀行さん。Mac雑誌の編集者から、2年半前に幻冬舎に移ったという経歴の持ち主だ。
「幻冬舎は、まだ創立8年目です。見城徹という元角川書店の名物編集者が同社を退職後に興した会社です。現在、総アイテム数は1300弱くらいでしょうか。文庫も含めて、月に3〜40アイテムを出版しています。」
通常の文庫に比べ、横幅が5ミリ短い幻冬舎文庫は、隊長のお気に入りでもある。「幻冬舎文庫は97年、一挙62冊同時刊行で、センセーショナルに創刊しました。当時、私はまだ入社していませんでしたが、『新しく出ていく者が 無謀をやらなくて 一体何が変わるだろうか?』のコピーはカッコ良かったですね。創刊時のポスターに書かれているように『5ミリ小さい、目にやさしい』文庫ですが、自分が担当した本はやっぱり売れて欲しいものだから、書店に行って隣にある他社の本の上にも積んだりするんですよ。売れてる感、オススメ感を出すために。でも5ミリ小さいから、下の本が見えちゃうんですよね。で、『あちゃっ』って感じ。そういうセコイこともしてたりします。仕事の一環です(笑)」
326氏と一緒に
仕事をするようになるまで
 幻冬舎では、誰が、どのような企画を起ち上げても良いのだそうだ。つまり、文庫の部署、企画本の部署、単行本小説の部署というように分かれているわけではなく、企画さえ通れば、編集者は好きな形態の出版物を手がけることができる。
「小説って、すごく時間がかかるんですよ、原稿を頂くまでに。書き上げるまでに長くて5年かかったり、2005年何月刊行予定の企画書が会議に出たりするんですよね。そういう世界なんで、原稿書きましょうという約束をもらっても、それが本になるのは早くて2年後、3年後だったりするんですよ。かといって、2年間も本を作らないわけにはいきません。それで、入社してから必死で企画を考えていた時に、326さんのことを知りました。
なにしろ彼の描くイラストとコトバ、一つ一つの作品にものすごい衝撃を受け、感動しました。しかも当時、彼はまだ21才。 こんなパワーのある男と一緒に本を作りたい!と思って会いに行って、必死で口説いて……。」
 そうやって、まず、既に出版されていたけれど、版元の出版社が潰れたために、宙に浮いていた作品集(ポストカードブック) 「〒326-0003」(1700円)を作り直して出版することに成功する。そこから、326氏と茅原さんの付き合いが始まった。
「このポストカードブックが10万部以上売れました。2次単行本にしては、相当なヒットだったんです。元の本に新たに描き下ろし3枚をプラスして出させていただいて。それから1年後に、今度は絵本を描いて欲しいと思ったんです。彼の場合、1枚絵の作品が多いんですけど、初めてストーリーを描いてもらおうという企画でした。それが「やさしいあくま」(1400円)です。去年の3月に出したんですよ。これは20万部売れました。」

お話をうかがった幻冬舎の編集者茅原秀行さん
今回、お話をうかがった幻冬舎の編集者茅原秀行さん。幻冬舎の326氏の書籍全てを手がけた人だ。

326氏の生原稿を見せていただく
326氏の生原稿を見せていただく。カラープリンタで出力されたものが、326氏の完成原稿の形だという。

茅原さんが手がけた326作品の数々
茅原さんが手がけた326作品の数々。左から「〒326-0003」、「やさしいあくま」、「JeLLY JeWeL」、「収穫には立ち会えないかもしれないが出来るだけ多くの種を蒔こう」。

326氏からFAXで送られてきた作品集の作品解説用の原稿
326氏からFAXで送られてきた、作品集の作品解説用の原稿。絵はデジタルだが、文章は手書きだ。

326氏が作ったラフを見ながら「JeLLY JeWeL」の表紙が出来るまでを解説してもらう
326氏が作ったラフを見ながら、「JeLLY JeWeL」の表紙が出来るまでを解説してもらう。

社内には出版物や映画化された作品などのポスターが沢山貼られている
社内には、出版物や、映画化された作品などのポスターが沢山貼られている



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