現在の業務内容は、コマーシャル、ゲーム、アミューズメントパークといったメディアでのプロジェクト開発やデジタル映像作成、特撮などの造形製作、アミューズメントパーク用の造形や映像の製作といったところが中心だという。ただし、それも、ビルドアップ側から、こういうのができますよ、といった営業をするのではなく、来る仕事に対応しながら拡げていったものらしい。
「初めての種類の仕事でも、1回やると、2度目は必ず来るんです。普通、100円もらったら、100円分の仕事しかしないじゃないですか。一般的には、80円分くらいの仕事をして、20円は利益として貰っておくとか。でもビルドアップでは、120円とか130円分やっちゃうんですよ。ただ、損はしないように、例えば必要な機材をどこかからタダで貰ってきたりして、最後に帳尻が合えばOKだから、というような感じで仕事を仕上げていくんです。だから、お客さんにしてみれば、いつも頼んでいる所より良いものができてくる。『こんなのがいいと思うんですけど』とか『これをなしにして、こっちどうですか』という提案を常に行なっているのも良かったと思うんですけどね」
という岡部氏の考え方は、クリエイティブなジャンルの仕事をする人間の基本。さらに、岡部氏は言う。
「凝った作り方を突き詰めていくと、最後には、時間と金がないということになっちゃうんですよ。例えば、時間と金があれば凝ったものを作れるやつと、作れないやつがいたとして、作れないやつに、時間とお金をいっぱい与えたら、場合によってはそっちが勝っちゃうこともあるんです。そこにさらに、外注に対しての仕事の振り方や、管理の仕方などを上手くやれば、結果的には、そっちの方がいいものを作れるでしょう。大切なのは結果だから、いくら僕が全部作ったんだって言っても、それが小さな公民館でしか上映されないような映画だったら、しようがないじゃないですか。だから、お金の調達から、時間の管理までも行なった上でしか、クリエイティブのこだわりが出せる場は作れないんです。その辺はやらなければならない事だと、自分を納得させて勉強していく。作りたいモノを作れる環境を作るのも、クリエイティブな仕事の重要なポイントなんですよ」
納得がいく仕事を行なって、なおかつ金銭や時間の部分での帳尻を合わせる。クリエーターだからこそ、お金の話もできなければならない。よく考えれば当たり前のことなのだが、それを実践している人の口からその言葉が出ると、不思議に新鮮な説得力がある。