「チョコベーダーの企画の最初は、コンビニ流通で何かやりたいということだったんです。店舗数の多さが魅力でした。また、コンビニ市場は、自分が好きなキャラクターを流通させるのに通りがいいだろうと思ったんです。それに、映像製作を自社でやろうとしているので、儲けを出さないといけないわけです。まず、製作資金の回収という形で。それで、うちはロボットとか、怪獣といったキャラクター物が多いから、それらを利用して、コンビニ流通で何か、という考えが浮かぶじゃないですか。そこに、チョコエッグがあって。チョコエッグのような食玩は、これまでは実際にいる動物とか、恐竜とか、探求していけばどんどんリアルになっていく傾向があるなあと考えたんです。全く想像から生み出したキャラクターではないじゃないですか。そのあたりから考えが始まったんです」
食玩ブームに乗るというのではなく、まず、食玩という形でキャラクターを流通させ、そこからさまざまな市場に展開させていこうという狙いが、アイディアの根本だという。
「宇宙人と円盤にしたのは、もちろん、普通に好きだというのもあるんですが、それよりも、そろそろ『謎』ブームだな、と思って去年見てたら、案の定そうだったからなんです。そういう勘が良くあたるんです。それに、宇宙人なら数も多いし。円盤は、ゴージャスさと言うか、宇宙人だけじゃつまらないじゃないですか。円盤があって、宇宙人がある、宇宙人があって、円盤がある。そんな風にしてみました」
そして、その企画を、友人のデザイナー(この人は、岡部氏の高校時代からの友人で、共に渡米した仲。現在もアメリカに住んで、「メン・イン・ブラック」のサブデザインなどを手掛けている。他にも、「ファイトクラブ」「チャーリーズエンジェル」などにも参加)に頼んで、デザイン画を描いてもらう。岡部氏のチームは、基本的に信頼しあっているため、企画のキーの部分を話せば、やりたいことが通じるのだそうだ。
「上がってきたデザイン画を見ながら、これはちょっと駄目だとか。デフォルメの加減とか、お姉ちゃんの頭身を、何頭身にするかの比率とか、厳密に何パターンも作ってみて、その中から100種類のデザインを決めました。それから、1シーズンで宇宙人12体+円盤12台にシークレット1種類の25種。それを全部で4シーズンに分けて出していこうと考えていたので、デザインを全部並べてみて、大きさや、バランスや、キャラクターのインパクトを見て、4カテゴリーに分けて、それぞれシリーズにしました」
目撃されたもの、古くから語り伝えられているようなもの、全く架空のものまで、さまざまな形の宇宙人と円盤たち。有名なものでも、アレが入ってないと思ったら、4シーズン目にちゃんと入っている、といった喜びも考えて、周到にシリーズ構成がなされている。
そこまでできてから、ライセンス管理の依頼のために行ったソニーミュージックの版権管理会社・グローバルライツで、共同著作としての契約依頼が来たという。それまでは、どこからの依頼もなく、完全に岡部氏が独自に動いていたプロジェクトだったそうだ。
そして、「チョコベーダー」のライセンスをトミーと森永に供給。「チョコベーダー」というキャラクターを使った製品が流通することになる。
他にも、ゲーム会社などにもライセンスを許諾しているそうなので、この秋から、かなり大きくブレイクしそうだ。
「僕は、ダサカッコいいってよく言ってるんです。レトロフューチャーじゃないですけど、昔のおもちゃのような良さもあって、デザインや重身のバランスを、大事に抑えようという風に思ってやっています。そうなってないじゃないっていう人もいるかもしれないけど。そこは、人それぞれ、好きずきがあるから」
正に、モノを作る現場、という雰囲気に溢れたビルドアップ。隊員も熱心に質問し、かなり熱い訪問になった。そんな熱い現場から発信されるのだから「チョコベーダー」が魅力的なのはあたりまえなのかも知れない。
text by:中野 本朝