ーリンククラブ探検隊 日本航空 JAL成田整備事業部編ー


 成田の新東京国際空港内「JAL成田整備事業部」には、世界に一台、ここだけで使われているという、航空機自動洗浄装置がある。日本航空と川崎重工業により共同開発されたこの機械は、開発に10年、総工費は約20億円。従来20人がかりで4時間かかっていたというジャンボジェット機の洗浄が、5人のクルーで約100分で終了するのだ(この時間は洗浄のみのもの。他に事前の準備や手作業による洗浄など、もう少し作業がある)。
 このハイテク洗浄マシンの見学ができるということで、リンククラブ探検隊は、急遽、成田に向かうことになった。早朝の成田空港に着いた一同を迎えてくれた、日本航空広報室の方の案内で、空港を抜け、整備地区へと向かう。成田のような国際空港の場合、空港のゲートの向こうは、日本であって日本でない場所。検問を通る必要があり、そのものものしさに無意味に興奮したりする。



 一同を待ち受けていたのは、間口約90メートル、高さ約26.2メートル、奥行きが100メートルという、鉄骨でできた巨大なジャングルジム。そこに今日洗浄される航空機がゆっくりと入ってくる。巨大なジャンボジェット機を、まっすぐに洗浄装置の中に入れる運転技術は見事としか言い様がない。しかし当たり前のことだが、機体を寸分の狂いもなく洗浄装置の定められた位置に止めるなんてことは、人間業では不可能。だが洗浄装置はプログラミングされている通りに動くだけだし、ブラシが当たる角度や強さなども、デリケートな機体を傷つけないように綿密に計算されて作られているので、機体の位置が少しでもずれていては装置が機体にあたってしまう。そこで機体が装置に収まったら、その位置をセオドライトという測定器具で四箇所から測定。そのデータを使って、洗浄装置の方の位置を微調整する。装置が機体にぶつかることは、機体の損傷を意味するので、この位置の設定は慎重に行われる。他にも、動作は常にコンピュータ室でモニタされ、トラブル時には、すぐに装置を止めることができるし、タッチセンサーで自動停止する機構も備えている。
 また、洗浄前の大事な作業として、測定の前に、水や洗剤がかかってはいけない部分の保護(マスキングと呼ぶ)作業が行われる。エンジンや機体の排気口とランディングギア(車輪)周り(特にブレーキ周辺)が、その主な場所になる。
 無数にある窓は通常のブラシだと傷を付けてしまう恐れがあるので、特別の窓専用洗浄装置があり、窓に一つづつ嵌めて洗浄(内側は手作業で洗浄)
する。そのため胴体を洗浄する装置は窓を自動的に避けて運行するプログラムが組まれているのだそうだ。
 翼に水をかける作業も行われていた。これは、熱で伸びて下がってしまった翼を冷やすことで、本来の位置に戻す作業だそうだ。翼の角度一つ違ってもトラブルになりかねないため、このような準備が必要になるわけだ。


離着陸のために滑走する旅客機を横目に、空港内を車で走り抜けると、整備地区のはずれに巨大な建造物のような航空機自動洗浄装置が見えてきた

洗浄装置に旅客機B747-300がゆっくりとトーイング(けん引)されてくる

けん引車を旅客機から外し、万が一飛行機が動かぬよう車止めをかけると、マスキングの作業に入る。ランディングギアは、洗剤が付着するとブレーキの効きが悪くなり、エンジンは動作不良を起こしてしまうため、マスキングは大事な作業だ。

航空機の正確な位置を洗浄装置のコンピュータに入力するため、セオドライトで測定する

全ての準備が完了したのち、このコンソールから洗浄装置を作動させる