村松亮太郎さん /Ryotaro Muramastu 村松亮太郎さん /Ryotaro Muramastu

1971年 大阪生まれ。映画に携わるために役者を志し、CM、ドラマなどのキャリアを積むうち、映画製作への想いをあらためて強くし、97年10月にディレクション集団「naked」を設立。デザイナー、ライター、CGクリエイター、プロデューサーなどのスタッフとともに、映画の全てをディレクションできる体制作りに入る。その間アートディレクターとしてアーティストのプロモーションビデオやドラマのタイトルバック、イベントのビジュアルディレクション、CIクリエイティブなどを手がける

村松亮太郎氏は、現在ネイキッドという会社で主にデジタルによる映像制作や映像デザインを行っている。テレビドラマのタイトルバックやTVCFなどで、知らず知らずにネイキッド制作の作品を見ている方も多いはずだ。さらに自らシナリオを書き、ディレクションする作品も制作。それらで得たノウハウや情報を、次世代のクリエーターに伝えるためのデジタルシネマポータルサイト「Nizoo」や、インディペンデント映像レーベルをたち上げている。そんなデジタルによる映像制作の最先端を走る村松氏に、Macと映像制作についてお話をうかがった。



デジタル映像の世界は本当に情報がなくて、僕自身が全部手探りで、独学でやってきて凄い苦労したんですよ。だから次の世代の人の情報の入り口になるサイトになれば素敵だなと…。



村松さんは、役者から映像制作へと転身されたそうですが、その際に映像ツールとしてMacを選んだのには、どのような理由があったのでしょうか。

「僕がこの仕事を始めたのは5年ほど前なんですが、当時、編集スタジオを作るのに、いくらかかるのって聞いたら「2億円」って言われて、それは無理だと。何か手がないかと思ったところに、ノンリニア編集というのを知ったんです。それでMacを導入したんですが、その時にMacを選んだ一番の理由というのは、QuickTimeという技術が素晴らしいと思ったからなんです。裏方に徹した地味な存在だけど、映像を総合的に扱う凄い技術なんですよ。汎用性も高くて、その選択は今でも間違っていないと思います。それでPower Macintosh 9500とMedia100、それにハードディスクを16GB分購入しました。このハードディスクが価格的に厳しくて、当時90万円くらいしましたね。全体では300万円くらいですか。でもこれだけで編集スタジオが持てるというのが良かったんです。ソフト的にはAfter Effectsが面白くて、それまで時間軸に沿って編集するという横軸一本だったのが、映像にレイヤーという概念を導入して、縦軸でも編集できるというのが物凄く新しかったんです。それから当時Mac版が出たばかりのLightWaveを触って、CGと映像の融合という方向も面白いと。でも、そういう変な入り方してるから、実はIllustratorなんて未だに詳しくないんですよ」


ディレクターとしての村松さんは、デジタルによる映像制作を、どういう風に捉えられているのでしょうか?

村松さん「デジタルでの作業の場合、演出だけじゃなくて編集も自分でやるので、編集をこうしたいからという意向で、撮り方が変わってきたりもしますよね。後で編集でどうにでもなるから、ということではなくて、デジタルシネマとして作るための撮り方。音楽制作も、CGも、すべてがMac上だと同時進行でできるんですよね。昔だと工程が一個一個終わらないと先に進めなかったんです。編集も、それこそ前から繋いでいくしかなかったり。それがどこからでもつないでいけたりとか、音をやっているうちに、インスピレーションが沸いて、そこから直したりとか、その自由さがMacでやるメリットじゃないですかね。全体を見ながら総合的に作っていけるんですよ。低コストということ以上に、リアルタイムに新しいアイディアを入れていけることの方がメリットですよね。クオリティに直結することですから。こういう機動性というのは、昔の8mmフィルムによる自主制作に近いんですよ。それにディレクターやスタッフが、わかっていなければならない部分が広くなっているのも8mm的ですね。だから35mmでの撮影に比べて、ディレクターの権限が大きくなるというか、中央集権的になってるんです。そういうのも面白いと思いますね。それに、例えば今の※1HDとフィルムの画質を比べて、まだ35mmの方がきれいだと言えば、それはそうなんだけど、デジタル映像は進化系にあるわけですよね。次に*SHDが出てきたら、もっと解像度も広がるし、変わっていく可能性がある。という風にデジタルにおいては、新しいものは確実にスペックが上がっていくんです。そこの可能性に惹かれています」


デジタルシネマのポータルサイト「Nizoo」と映像レーベルを起ち上げられたんですよね。

「デジタル映像の業界って、非常に機材が高かったこともあって凄く閉鎖的なんです。それがイヤで、Nizooに関してはその環境と情報をオープンにしていきたいという狙いがあるんですよ。デジタル映像の世界は本当に情報がなくて、僕自身が全部手探りで、独学でやってきて凄い苦労したんですよ。だから次の世代の人の情報の入り口になるサイトになれば素敵だなと。レーベルの方は、音楽で言うインディーズレーベルと同じように考えていただければいいと思います。とりあえず、うちで今、3本のショートフィルムを作っていて、それが第一弾になるんですが、徐々にオープンにしていくつもりです。つまり自分の作品制作だけではなく、出資とかプロデュースとかそういう形でも、映像を送りだして行こうと考えているんです。それらを通して、「インディペンデント」で映像をやるということは、どういうことなのか、を追及していけるといいな、と思っています」


ありがとうございました。

※1 HD(High Deffinition):放送用ビデオの高品位規格。SHDはその拡張型。



デジタルシネマ・ポータルサイト Nizoo
http://www.nizoo.com/


nizoo web



text by : 石上 耕平
<< Back to home >>