Mac Freak File No.64   

ジャンルと国境を超えて世界的に活躍するギタリスト、渡辺香津美さんの活動は、まさにクロスオーバー。今日では譜面整理、アレンジ、制作ダイヤリーとして活用するなど、渡辺さんの音楽制作を支えるMac。今回はリンククラブ会員でもある渡辺さんにMacとのつきあい方を伺った。


渡辺香津美さん
1953年、東京生まれ。71年、アルバム「インフィニット」でデビュー。79年、坂本龍一、矢野顕子、村上秀一など気鋭のミュージシャンたちと伝説のオールスターバンド「キリンバンド」を結成し、当時のミュージックシーンに衝撃を与える。同年秋に行われた「イエロー・マジック・オーケストラ」のワールドツアーに参加、世界各地で大絶賛を博す。80年、アルバム「トチカ」が記録的な大ヒットとなり、ジャズ・フュージョン界におけるスーパーギタリストの地位を確立。さらに世界の多くのトップミュージシャンたちとの共演、アルバム制作を行い、優れた作品を発表する。2001年には30周年集大成として「ギター組曲」を初演、アルバムもリリース。96年より洗足学園ジャズコースの客員教授を歴任。NHK教育テレビ「アコースティックギター入門」の教授を務めるなどジャンルを超えたクロスオーバーな活動でも知られる。

「クリエイトする場合に自由度が高いんです」

――Macとの出会いはいつごろですか?

もともとコンピュータ自体は楽曲の整理のために使っていたんですが、1989年くらいにアメリカのメンバーでトリオを作って、ロサンゼルスでレコーディングに臨んだ時、Macを持っているメンバーから「今度のアルバムはMacを使ってベーシックを作ろう」という話が出ていたんです。「そんなことができるの?」と思ったのがMacを意識した最初。彼の話によればホームレコーディングみたいな形でデータを作って、正式にスタジオに入ってから楽器を入れたりするというんです。結構おもしろそうだな、と思いました。ところが、彼はMacで、僕は違うコンピュータを使っていたからデータのやり取りが直接できない。とりあえずショップに頼んでMac用のフォーマットにデータを変換してもらったりして大変でした。やっぱりこれから先はMac持ってないとダメだなと思い、紹介してもらったガレージショップみたいな店に行って、登場したばかりのMacintosh SE/30を見ました。日本なら定価100万円くらいしたと思います。でも、いろいろ調べてMacintosh SEを購入して、ハードディスクは後から増設すればいいと考えました。だからマイファーストMacはMacintosh SEです。


――渡辺さんがMacを取り入れ始めた頃、周りの方は?

その当時はMac自体が高価ということもあり、そんなにいなかったのです。でも僕がスタジオにMacを持っていくでしょ、そうするとレコーディングエンジニアの人が「これ何?」って見ているうちにはまっていって(笑)。それで次に僕が機種をバージョンアップする時に「一緒に買おうか」って言って、Macユーザが周囲に増えていきました。音楽以外では、コンピュータに無縁のデザイナーなど、家に遊びに来て、僕がMacで写真を貼ったりしているのを見て、プロのプライドを刺激されたらしく、「素人にこんなことできるのは許せん」と、勉強し始めた人もいましたね。


――コンピュータがまったくない時と現在とでは、曲の作り方などに変化はありましたか?

最近はハードディスクレコーディングなどの進歩で、制作はずいぶん楽になりました。特にアレンジには便利なのでMacを使っています。いわゆるAメロディーとかBメロみたいなパーツごとにブロックを作っていって、それを編集する。思いついたら、切り張りして、前のフレーズを後ろに持ってきたり簡単に試せる。レコーダーのように頭から録っていく、というスタイルではないので、クリエイトする場合に自由度が高いんです。ファイルに名前つけておくだけで、ある部分では制作日記とかクリエイト日記みたいなものになるところもいいですね。


――最新アルバム「ギター・ルネッサンス」でもMacを使って?

曲のアレンジをした譜面はすべてMacで作っています。リハーサル段階で録音して、音の広やアンビエントの感じを確かめるためにも、自宅スタジオのMacを使ってリハーサルしています。


――「ギター・ルネッサンス」の特徴と聴きどころを教えてください。

これまでもギターソロのアルバムで、アコースティックギターをフューチャーした作品は作ってきましたが、結果としてゲストが入ったり、アンサンブルが入ったりしていました。本作ではデビュー32年目にして初めて、最初から最後までゲストなしで、一人で演奏しています。また、コンサートでは何度か演奏していますが、バッハやラヴェルなどの演奏をパッケージとして残すのは今回が初めてです。また、選曲、曲順に関しても、みなさんがふっと自然に入っていけるようにベストだと思える選曲、曲順にしました。Macユーザのようにいろんな仕事をしながら聴くのも快適ではないか、と思います。とても心休まる音楽になっているので、ぜひ聞いてみてください。


――本日はありがとうございました。

text by : 倉田 楽






2月21日発売 ニューアルバム
『 ギター・ルネッサンス 』
EWSA-0074 ¥2,857(税抜)
イーストワークス
渡辺香津美初のアコースティック・ソロ・アルバム。2002年8月「王子ホール」で録音。渡辺香津美の原点であるジャズやクラシックの作曲家・演奏家の名曲とオリジナル曲で構成。収録曲は、「無伴奏チェロ組曲第1番より“プレリュード”」(J.S.バッハ)、「アクロス・ザ・ユニバース」(レノン&マッカートニー)、「亡き王女のためのバヴァーヌ」(ラヴェル)、「ワルツ・フォー・デビー」(ビル・エヴァンス)ほか全13曲。4月18日には、同アルバムを記念して「王子ホール」でライブが開かれる
Present
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渡辺香津美オフィシャルサイト
http://www.hilltop.co.jp/kazumi/

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