山田純大(やまだ・じゅんだい)
俳優 昭和48年2月14日生まれ 東京都出身
成城学園初等科を卒業後、ハワイの中学、高校に留学。その後ハワイの大学からカリフォルニア州の大学に転校し、卒業。帰国後、俳優としてデビュー。主な出演作品は、NHK連続テレビ小説「あぐり」、NHK大河ドラマ「毛利元就」、TBS「水戸黄門」、主演映画「ムルデカ」など多数。


伊達貫太と山田純大、それぞれの「自分」

現在放送中のドラマ「貫太ですッ」で主役の伊達貫太役を演じている山田純大さん。実は、ご自身としては連続ドラマ初主演、この「昼ドラ」の時間帯としては25年ぶりの男性の主役なのだとか。そんなプレッシャーを背負いながらも、ひとりの俳優として着実に才能を開花させている山田さん。そんな山田さんに御自身の生き方についてお話を伺いました。

今回のドラマ「貫太ですッ!」は、新聞配達店の息子という役柄。実際、山田さんが育った環境とはかなり違うように思います。ご自身の育った環境と違う人間を演じることをどのように思いますか?

いや、意外に似てるところもあるんですよ。例えば、「間違っている」と思ったことをちゃんと主張するところとかね。それに僕もアメリカではずっと海の近くに住んでいましたし。そう、貫太はアメリカ人みたい。自分の主張がちゃんとあって、思ったことを口にできる。そしてそれによって周りの人間が心を動かされて行く。本当、ちゃきちゃきの江戸っ子かアメリカ人かって感じ(笑)。そういう意味では現代の日本人とは全く違うと思います。でも僕の育ってきた環境にはこういう人たちがたくさんいましたから、すんなり演じることができましたね。

山田さんのお父様は芸能活動をなさっていることもあり、山田さん自身も芸能活動をするのに恵まれていた。しかし、中学からアメリカに留学したり、そんな環境に甘えることなく自分で人生を切り開いてきた山田さん。そんなご自身の生き方をどう思いますか?

幼いうちにアメリカに行ってしまったので、それほどディープな芸能界は知らなかったんです。でも父の影響で芸能界に入ったとしても、歌のうまさとか演じることとか、芸って継承されるものではない。やっぱり、自分の素材を元に、実際に見て、経験して学ぶものだと思うんです。だから父が僕に直接の影響をおよぼしたということはないですね。だいたい、大学のはじめくらいまではこの世界に入ろうなんて全く思っていませんでした。でもハリウッドや日本のいい作品をたくさん見るようになって、自分もやってみたいと思うようになったんです。そのことを父には相談せず、報告だけしました。

中学からアメリカ留学することはなかなか決断できることではないと思いますが、実際、アメリカに留学されてどうでしたか?

留学は決断という感じではなくて、そういうことにものおじしない性質だったんだと思います。近所や両親の友人の中に外国人がけっこういて、ひとりでその外国人の家に泊まりに行くのが好きだったんです。日本人じゃなくても楽しいっていう気持ちが小学生の頃からあった。子供って言葉がいらないじゃないですか。だから面白いな、世界は広いなってずっと思ってました。そしてきちんとコミュニケーションをとるには英語が必要だって思った。アメリカは生きるのがラクです。生き方でもファッションでも人のスタイルに誰も文句をつけない。みんなが個性を認められている。まぁ、いろんな民族がいるから一概にケチとかつけられないっていうのが本当のところなんでしょうけど(笑)。日本はラクというより便利。電車とか、物質的な意味で。ただし日本には一つの民族しかないから飛び出たらやられる。それが個性の出にくい原因だと思います。でも貫太みたいな人間は、けっこう日本でも成功するタイプじゃないですか。今は学校とか関係ない。上にたったらそんなことよりも、周りの人間から信頼されるかどうかですから。

アメリカ留学の経験は俳優というお仕事に役に立っていますか?

役に立っているとこととそうでないところがありますね。プラス面をいえば、いろんな世界を知っているという自信はあります。どんな国の人が来ても臆せず仲良くなれる。ほとんどの日本人はそれができないですから。マイナス面をいえばハリウッドに対する考え方ですかね。よく、アメリカにいたのならハリウッドを目指せばよかったのにって言われるんですが、実際、現実に人種差別やハリウッドの厳しさを見てますから。ジャッキー・チェンとか中国の俳優さんは、時間はかかったけどハリウッドでも今、名を馳せています。でも日本人にそれができる土壌はまだない。ハリウッドの日系社会もないですし。僕たちの世代ではまだまだ無理だなっていうのを実際見てわかってますから。俳優としてハリウッドや世界に進出することに対して、無鉄砲さがないんですよね。

インターネットで「今」を実感

俳優という時間に縛られる仕事をされていると、やはり友人とのやりとりは電話やメールになってしまうと思うのですが、 山田さんご自身はプライベートでインターネットなどはよくお使いになるのですか?

実はMacを持ってたんですけど、最近妹にあげちゃって(笑)。でも家に帰ったときは見ますよ。僕の友人にアメリカ海軍で整備士やっている人がいるんですけど、この前その友人がイラク戦争の現場からメールをくれたんです。自分の整備した飛行機が飛び立ったけど今日還ってこなかったとかって…。そういうことが一瞬にして、テレビでもなくナマで自分に伝わってくる。すごい時代になったんだなと思いました。でもメールは受け取り専用。筆無精というか、打ち不精で(笑)。メールがきたら電話で返しちゃいます。でも海外の友達と、どこにいても連絡がとれるっていうのはすごく便利ですね。最近はファンの方がHPを作ってくれていて、ダイレクトなファンの声もきけるので刺激になります。いろんなメールをいただくんですが、本当に細部まで演技を見てくれてるんだなぁと思いますね。「きっとこんな気持ちで演技してたんですよね!」とか言われると「そうそう、そうなんだよ!」って(笑)。自分の演技が伝わっているんだと思うとすごくうれしい。ホント励まされます。

アイデンティティは、
周りとの信頼関係から生まれる

俳優の仕事は、自分であって自分でない人間になりきること。そのようなお仕事をしていると、俳優ではない自分自身のアイデンティティというものがわからなくなってしまいそうな気がするのですが、山田さんは自身のアイデンティティをどうとらえていますか?

役に入るとかみんないうけど、僕はそうじゃないんです。自分があって、役がある。だからどんな役をやっていても自分が出てしまう。メーキャップとかセットとか、それこそハリウッドみたいにお金かけてそこからつくり込むのなら別ですけど(笑)。僕にとって演じるということは、その役にあてはまる「ある一つの自分」を、最大限に引き出すこと。だから僕の場合、自分の個性やアイデンティティが基本となっている。自分の中にいろんな個性の引き出しを持ってるからいろんな役になれるんだと思います。最近、役者っていろんなことを知っていた方が得だなぁってつくづく思います。いろんな経験や感情を持っていれば引き出しも増えますから。

貫太も山田さんも自分らしい生き方をしていますが、まだまだ多くの日本人にとっては難しい生き方でもあるようです。自分らしく生きるにはなにが必要だと思いますか?

僕の場合は、人に見られるのが仕事です。それで、いろんな人が無責任にいろんなことを言う。でも僕が本当に耳を傾けるのは、本当に信頼できる2、3人の人間です。彼らに良かったか悪かったか教えてもらうんです。そういう人達が周りにいるから僕はこの世界に流されずに自分を保っていられる。それは僕の仕事に限ったことではないと思います。本当に信頼していて、そのままの自分を判断してくれて、お互いサポートしあえる、そんな人間関係の構築が自分らしく生きるために必要なんじゃないかと思います。家族とか、友人とか、そういう人たちを大切にして、いい関係を築いていくこと。そのためには自分自身に正直に、自分を主張できるようにならなければ。主張っていうのは自分の意見を曲げないとか人の意見を聞かないとかそういう意味ではなくて、自分の中にいいことと悪いことの判断基準がしっかりあって、それを人に言えるようになることだと思います。

でもよく言われるんですよ、僕は人を信用し過ぎるって(笑)。芸能界は人を押し退けていく世界なんだろうけど、僕はそうではないんです。押し退けていく人もいれば、僕みたいに背伸びしないで、そのときやれることをやって徐々に経験を積んで行く人もいる。その積み重ねがいつか結果となって、自然に表れるものだと思うんですよね。人を押し退けると絶対ひずみが来ますよ。本当は僕も押し退けたいんだけど、そんなことしたら後でまわりまわって還ってくるじゃないですか(笑)。僕はそう思っちゃうん です。でもそれが自分らしい生き方だと思ってます。



環境に甘えず人生を自分で切り開いてきた山田さん。でもそういう生き方ができたのは周りの人たちの応援や支えがあったからと山田さんは言います。自分というアイデンティティは他人への感謝の気持ちを持って初めて確立される。25年ぶりの男性主役キャストに大抜擢された理由がなんとなくわかったような気がします。取材後、私たちに丁寧に挨拶をした山田さんは、たくさんのスタッフに見守られてスタジオへ向かっていきました。


ホームページ/TV紹介


6月30日〜フジテレビ系全国ネットで放送中
「貫太ですッ」毎週月曜日〜金曜日 午後1時30分〜2時
ドラマ「寛太ですッ」は新聞配達店の息子・貫太とそれを取り巻く個性的な面々の、本音でぶつかりあって生きていく姿を描いた人情物語。

東海テレビホームページ
http://www.tokai-tv.com/


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