――溝口さんと言えばチェロ、というイメージですが、初めはピアノを勉強されていたそうですね。なんでも、3才の時にカラヤンを見て、音楽の道に進むことを決意されたとか。 「僕は覚えていないんですが、子供ながらに興奮していたんでしょうかね。テレビでカラヤンがタクトを振るうのを見て、喜んでいたっていうんですよ。それで親が「この子には音楽をやらせよう」と考えて、ピアノを始めたんです。でも、11才の時に、ピアノのレッスンが面白くなくなってしまって。もう辞めたい、と言ったんです。そしたら、ピアノは辞めても良いけど、何か楽器は続けなさい。と言われて。それで、自宅の一番近くにあったのがたまたまチェロの教室だったんです」 ――初めての作曲が22才の時だったそうですが、なにかきっかけとなるようなできごとがあったんでしょうか。 「これは話すと長くなるんですが…。実はその頃に交通事故に遭ったんです。ムチウチのせいでひどい不眠に悩まされましてね。吐き気と頭痛とで、もう精神的に参ってしまって、それが1ヶ月以上続いた。そんなときに、知人に整体治療を紹介されたんです。そしたら治療を受けたその夜、久しぶりにものすごく気持ち良く眠れたんです。こんな気持ちのいいものはない。そうだ、治療中に何か音楽があったら、もっといいのではないかと思い、初めて曲を作ったんです。だから、発端は僕自身が眠るための音楽だったんです」 ![]() ――Macとはどう出会ったのでしょう? 「今はMacのDigital Performer 3というソフトを主に使っていますが、昔はPC9801のカモンミュージックっていうソフトを使って作曲していたんです。ところが、86年にニューヨークレコーディングをすることになって、データを持って行かなければならないという時に『ニューヨークにPC9801なんてない!』って言われて(笑)。実は僕、PC9801って世界標準だと思ってたんですよ(笑)。で、急遽MIDIデータをMac用に変換したのが初めですね。そのあと、ニューヨークのスタジオで、エンジニアがMacで音質を調整しているのを後ろで見てて面白そうだなー、と思って。Macだとこんなことできるんだ、と。ちょうどSEが発売された時だったんで、すぐに買いに行ったんです。でもね、SEって確か20MBのハードディスクが付いてるのが画期的で、それが主流だったんだけど、僕が雑誌か何かで見たSEは2フロッピーのタイプ(ハードディスクなし)の写真だったんですよ。それで店で、これじゃないんだ! 2フロッピーのやつが欲しいんだって、わざわざ(笑)。マニュアルは当然英語だから全然わからない。ニューヨークにいる間に一生懸命人に聞いたりしたんだけど、結局わからないままで日本に帰ってきてしまったので、大変でしたよ。 ――今後の活動予定をお聞かせ下さい。 「来年早々に新しいCDを出すので、これから作品作りですね。今度は、ものすごくシンプルなものにするつもりです。それが終わると、5月にコンサートツアー。それと、実は映像にも興味があって、ずっと撮り溜めしてるものを、いつかまとめたいなと思ってます。自費でカメラマンとモデル、ヘアメイクさんをつれてアメリカの砂漠に1週間ぐらいロケしたりして、今はその映像はライブやDVDで使用してます。いずれはロードムービーを撮りたいんです。1本でいいから」 ――ありがとうございました。 text by:石上耕平
|