A WAY OF LIFE -title-

PROFILE

NOKKO | 埼玉県出身。1982年ロックグループ「REBECCA」を結成し、1984年「ヴォイス・プリント」でデビュー。1985年「フレンズ」が大ヒットとなり、一躍メジャー・グループとなる。1990年からはソロ活動に力を入れ1991年の解散後に渡米、のち渡英。1992年ソロ・デビューを果たし、シングル「人魚」が大ヒット。2000年活動を一時休止。2003年アルバム『宇宙のコモリウタ』を発表。故・谷内六郎さんの絵とのコラボレーションによる『フルサト』がNHK『みんなのうた』で放映される。

GOH HOTODA | 東京都出身。シカゴでエンジニアリングを学び、1990年マドンナの『VOGUE』のエンジニアリングを務め、今ではポピュラーとなったハウス・ミュージックの基盤を作った。その活躍はジャネット・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、坂本龍一、宇多田ヒカルなどの一流ミュージシャンの活動にエンジニアとして参加、世界の音楽シーンに及ぶ。仕事を通じ10年来の付き合いのあった二人が2002年に結婚。それを機会に「NOKKOandGO」を結成した。

INFO

アコースティックLIVE ・千夜一夜/12月11日、ライブハウス“下北沢440”にて開催。
 お問い合わせはhttp://www.nokko.jp/まで
ニューアルバム ・待望のニューアルバムは近日リリース予定
一世を風靡し、'91年に惜しまれつつ解散したバンド、REBECCAのボーカルNOKKO(ノッコ)さんと、世界的なサウンドエンジニアであるGOH HOTODA(ゴウ・ホトダ)氏。この二人が新しいユニットを結成し活動を開始したのは昨年の暮れのこと。同時に私生活でもご夫婦である二人は、今はニューヨークを拠点に新しい時代に向けての音楽活動を模索しているという。プライベートでも一緒のお二人は、それぞれがトップのアーティストであるという稀有な状況だ。それぞれが持つ感性や才能は、相手に対してどのように影響をしているのだろう。そして今や音楽の世界と密接な関係を持つに至ったIT機器との関わり方はどう影響しているのだろうか。お二人にお話を聞いてみた。

WEB

nokko.jp
http://www.nokko.jp/

ALBUM

宇宙のコモリウタ
フォーライフレコード | FLCG-3103 | 2,205円

DVD+BOOK

フルサト
詩・NOKKO/絵・谷内六郎 | 広告批評・マドラ出版 | 2,310円

____今はご一緒に生活されていらっしゃるわけですが、それ以前からもお二人共に超一流のアーティストでした。生活を共にすることで影響し合う部分や刺激される部分は多いと思いますが。

ノッコ:「知り合ってからもう10年以上になりますし、仕事もずっと一緒にやってきています。考え方や好みが近いと分かったから一緒に住んでいるので、今になって改めてなにかがということはあまり多くはないですね。でもいつもハッとさせられることがあり、自分だけでは気が付かないところを教えてくれる存在です」

ゴウ・ホトダ(以下ゴウ):「そもそも音楽制作は沢山の人と関わることが多く、短い期間に同じ目的に向かって協力していく作業です。ですからいざその場になれば、あまり私生活は影響しませんね。音楽以外の面でも好みや方向性をより深く知り合うことは、よりきめ細かい作業を可能にしていくと思います。二人で古いLPレコードを聴いていろいろな話をしたりしますよ」

____逆にアーチストとしてお互いが相容れない部分や、納得できない事など出てきたりはしませんか。

ゴウ:「私にとって音楽制作は、大事な『仕事』です。一緒に仕事をする相手が誰であろうが真剣に取り組みますし、妥協もしたくはありません。これが『趣味』なら締め切りも予算も気にせずにのんびりと取り組むかもしれませんが、仕事である以上はそうはいきません。以前マドンナと仕事をした時に、彼女は非常に注文が多くきめ細かな作業を強いましたが、仕事として見た場合にはそれは当然の事なのです。仕事の範疇での意見交換は当たり前ですし、仮にそのアーチストのことが個人的に好きになれなくても、仕事の水準を下げるわけにはいきません」

ノッコ:「お互いの考えや感性が近いから一緒に暮らしているわけで、その意味では逆に仕事の時に甘くならないよう気を付けています。何となく許してしまったり理解してしまったりするのではないかと不安で。厳しくしすぎて、お互いに首を絞め合う関係になったりしたら困ってしまいますけどね」

____今お二人がお住まいになっているのはニューヨークです。そしてゴウさんは宇多田ヒカルさんの新作も手がけられたとか。イチローや松井など、アメリカで活躍する日本人も目立つようになりましたが、アメリカで日本人アーチストは受け入れられるでしょうか。

ゴウ:「ヒカルちゃんはこっちで生まれ育って、今も住んでいて英語の問題が無い。まずそれが最初のハードルをクリアしたということです。こちらで生活した時間があるからこそ文化や時代性を理解し、アメリカの音楽ファンの心に響く歌を歌えるのでしょう」

ノッコ:「宗教や文化風習などを理解してようやく相手のことが分かるのだと思います。ガイドブックを見て旅行して、というだけではこちらで受け入れられる事など無いでしょう」

ゴウ:「ポップ・ミュージックというのは人気投票のようなものです。ベースを踏めば必ず点が入るスポーツとは比べにくいです。どちらかと言えば、大統領選挙のキャンペーンに近いのではないでしょうか」

ノッコ:「曲というのは世に出してしまった時点ですでにアーチストの手を離れます。私がかつて歌った曲でも、聞いた方のその時の年齢や思い出や、更にはその後の経験なども全て混じってようやく思い出の1曲として成り立つのであり、例え私の曲であっても、もうその時点で私の歌ではなくなっているのです」

ゴウ:「その為にやはりファンの共感を得なければなりません。アメリカに多いロック・グループが年を取っても全米ツァーを続けていることが多いのは、まさにそのことの象徴でしょう。同じ時代とそこから現在迄の時間をファンと共に過ごしてこそのポップ・ミュージックだと思います。やはり選挙時の遊説とよく似ていますね」

____お二人にとってニューヨークはどういう街ですか?

ノッコ:「ニューヨークは以前住んでいたときに比べ、すごく綺麗になりましたしマイルドになりました。それが寂しいという方もいらっしゃいますが、私は元来都会が苦手ですし、あまり出歩いたりもしないので、今の方が好きですね」

ゴウ:「ニューヨークには、この街の魅力というよりもアメリカとしての魅力を感じていて、80年代半ばから住んでいます。今は日本での仕事も『行った』とか『帰った』という感じすらなくなりました。この街は仕事の拠点とするには素晴らしい街です」

____ところで現代の音楽制作の工程にはパソコンを始めとするハイテク機材は必需品となってしまっています。

ノッコ:「私がデビューした頃には既にパソコンは使われていました。でも今は昔と違って音楽制作という仕事はすごく細分化されてきていて、仕事のレベルもずっと高くなってきていることから、機材に対する要求も重要度もすごく高くなってきたのは感じますね」

ゴウ:「例えばパソコンがあってソフトが入っていたら、本当は誰もがプロ並みの音楽制作が出来る筈です。昔だと楽器を演奏出来ないとか楽譜が読めないとか言い訳がありましたが、今はそういうこともない。もう10年以上前からパソコンは我々プロのレベルでさえ十分以上の機能を有していました。しかし、より高機能になった筈のパソコンで作られる音楽が、ますます没個性になっている一面もあります。『アーティスト』であるなら、そこには他と違う『何か』がないと」

ノッコ:「ある意味、アーティストの『エゴ』が前面に出るくらいでないと聞き手にその思いは伝わりませんね」

ゴウ:「パソコンのもう一つの問題点として、繰り返しの再生が容易なことから、自分の作品をすぐに客観的に評価出来るということが挙げられます。これはプロから見ると良い面でもあるのですが、やはり音楽はあくまでセンスでしょう。論理的に突き詰めることだけで良い作品が出来あがる訳ではありません。特にパソコンが音楽の世界に普及してきてからは、それ以前に比べ、見た目だけが良く見えるものが氾濫するようになりました。機械任せでリズムを揃えたりする事で、何となくごまかしてしまうことが容易になったせいだと思います。うわべを整えることと、クオリティの高い音楽を作ることは大きく違います」

ノッコ:「普段私は音楽制作のほんの一部にしか関わっていませんが、それでも現在の状況は素晴らしいと思いますし何よりとても楽しいです。ゴウさんに教えて貰いながらLogicなど、音楽制作用ソフトの使い方も勉強しているんですよ。昔は広いスタジオを確保して、何人ものエンジニアの方々に集まっていただいて、そういう環境を整えないと出来なかったことが、今は目の前のパソコンの中だけで全て行えるようになってきました。かつてはスタジオに入って初めて会った方とお仕事をすることなどもありましたが、そうなると細かい意見の食い違いや考え方の違いはどうしても無くすことが出来ません。でも今では自分がこだわりたいところは全て納得いくまで手を掛けられるので、表現がより自分の感性や言葉を反映したものにすることが出来ます。ましてやエンジニアであるゴウさんは私のことを毎日見てくれているわけですから」

ゴウ:「多くの方々に勘違いして欲しくないのは、パソコンが普及して音楽制作の手法が若干変わってきたからといって、それイコール音楽のクォリティが上がったことではないということです。確かに音楽制作の手順に若干の差異が出てきたことは事実です。だからといって生み出されてくる音楽に求められる品質や出来映えにはなんら変わりはなく、その意味ではパソコンも一つの楽器といってよいのではないでしょうか。有名なギタリストと同じギターを手にしても、出てくる音にはやはり大きな違いがあるように、同じパソコンでも全く違う音を出してくるアーティストは沢山います。結局のところ、音楽とはやはり感性の産物なのです」

ノッコ:「可能性が一気に広がった今は、私にとっては無限の翼を手に入れたような感じです。『ようやく人格を取り戻せた!』って(笑)」

____そして自由に自分自身を発信する場として、お二人はWEBサイトを上手くご利用されているようです。

ノッコ:「今までもずっと歌う曲の歌詞は自分で作ってきました。代弁者の言葉を私の言ったことのようにして外に出すのは好きではありませんし、その為に要らぬ誤解や中傷を受けたこともあります。ですから今はもう、自分が発した自分の言葉だけを伝えていきたいと思っています」

ゴウ:「多くのアーチストの場合、その公式サイトはレコード会社や所属事務所の意向が優先されることが多々あります。でもノッコの公式サイトであるnokko.jpは全て彼女の言葉だけで書かれていますし、掲載してある写真も私が撮影したものです。その為に更新が遅かったり商業的な内容ではなかったりしますが、これが素顔な私達二人のやり方なのです」

____その「ご自身の言葉」で溢れるノッコさんのホームページはリンククラブのドメイン取得サービスをご利用してのものとか。

ゴウ:「もう2年ほども利用させて頂いております。実はちょうどこれから、nokko.jp上でいろいろと新しいことを始めていこうと思っているところです。ノッコの新しいアルバムがもうすぐリリースされるのですが、ファンの方々にオンライン経由でお届けしていきたいと考えていますし、コンサートのチケットなども扱えるようにしたいと考えています。最近ではiPodのようなMP3プレーヤーも普及してきたので、そういう音楽の楽しみ方をするファン達にもきめ細かい対応をしていきたいと考えています。そういうことなど、いろいろと要望があるので、是非リンククラブさんへ伝えてください」



柔らかな笑顔の中にもキリリと光るまなざしが素敵なノッコさん。デビュー当時と変わらぬ煌きは今は羽根の中にくるまれているかのようです。ホトダ氏は穏やかに整然としながら、冷静且つ沈着なお話しぶりで、まるで研究者かと思われるばかり。お二人共が自分の言葉でお話しされ、ご自身の考えをしっかりお持ちなのが印象的でした。お二人の関係はまるでバイオリンの弦と弓のよう。お互いが一流であるが故に、一緒に鳴らせば更に素晴らしい音を奏でることが出来るのでしょう。現在ホトダ氏が計画中、というノッコさんのニューヨークでのライブ。一日も早い実現を望まずにはいられません。




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