園では、シラス、イワシ、サバといった実際の食材に触れながら、食物連鎖を子供にもわかる方法で学ぶ。「いただきます」「ごちそうさま」も挨拶ではなく、食べ物に対する感謝の気持ちで言えるようにというのがこの園の考え方だ。
「人は、食べていくことから離れることはできない。おっぱいから始まって人生の終わりまで、それこそ一生です。だからもっと大切にしなくては。食育っていうのは、机上論ではダメなんだとつくづく思いますね。現場をもっと大切にしないと」
子供達はそういうチャンスが少ないだけで、とっても食には興味があるとも。日々子供達と接する志賀シェフならではの言葉だ。
「クリスマスのときにはローストチキンをするので、鶏を丸のまま用意したんです。羽根こそついていないけれど、トサカや脚はついたまま。鶏を見ることはあっても、こういう状態で触ることはなかなか体験できないから、みんなじっくり観察していましたよ。むしろ保育士のほうが引いちゃってたかな(笑)」
同園の園児数は82名。それに対して栄養士3人、調理員とパート各1名、そしてシェフと、食関連の職員が多い。毎月、姉妹園の船堀中央保育園と給食会議をもって、メニューの情報交換も行われているとのこと。「大きなおうち」をテーマに子供達にとっての「第2のおうち」であるという考え方なので、気候のよいときには園庭やテラスで食事をしたり、時には公園で食べたりもするという。
「小学校にあがったときに、好き嫌いがたくさんあったら楽しくないですし、困りますよね。自ら育てたものを食べることで苦手な野菜にも興味が持てたり、命を大切にする子供になると思うんです。もちろん、シェフや栄養士達は苦手になりがちな食材をどうやって子供達に好きになってもらうか、日々熱心に研究しています」
食を育む環境についても気を配っている。
「年齢に関係なく、できることを積極的にやれるよう、環境を整えていくことが大切ですね。園庭には職員手作りのかまどがあるのですが、夏には収穫したトマトでソースを作ってピザを焼きました」と園長。そして、次なるステップは畑。これでもっと素材に近づくという。
小さいうちにしっかりと鍛えられた味覚や食への興味は、その後の人生を豊かにしてくれるに違いない。
ある子供が言った言葉が心に残る。「シェフの作ったもの、みんなおいしいよ。シェフの手は、魔法の手!」