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信頼文具舗のサイト
信頼文具舗
http://www.wada-denki.co.jp/ bunguho/shop00.html
「信頼文具舗」オーナー和田哲哉さん

書籍『文房具を楽しく使う〜筆記具篇』
『文房具を楽しく使う〜ノート・手帳篇』(1680円)に続き、2005年11月に『文房具を楽しく使う〜筆記具篇』(早川書房/1680 円)が出たばかり。いずれも文房具への愛に満ちあふれている。
「信頼文具舗」オーナー 
和 田 哲 哉
さん
(わだてつや)
1964年、東京都生まれ。日本大学理工学部機械工学科卒業。和田電機株式会社取締役社長。幼少の頃から文房具が好きで、97年に個人のサイト「ステーショナリープログラム」を開設。 地方では一部の文房具は入手しにくいという声を反映して、99年に文房具のオンラインショップ「信頼文具舗」をスタート。  

「信頼文具舗」オーナー和田哲哉さん小さい頃からの文房具好きが高じて
個人のサイトからショップへと発展


和田さんの文房具好きは、幼少の頃からだという。

「小さい頃、実家の経理を担当していた母の仕事場へ
よくついていったんです。そこには銀行からもらった
小さな鉛筆のついた手帳が積まれていて、好きに使っ
てよかった。 それが記憶にある最初の文房具です。
そして、お小遣いを貯めては文房具屋さんへいきました。コクヨのメモ帳をサイズ違いで揃えるといった、子供にしてすでに文房具に どっぷりな毎日(笑)」


小学校では級友を前に、どの消ゴムがよく消えるかの公開実験もしていたというから驚く。のちに触れるが「ステーショナリープログラム」の下地がすでに築かれていたといっても過言ではない。

 以降も文房具の魅力にとりつかれ、研究を深めていった。それは会社員になっても続いていた。のちに退職し、家業である和田電機株式会社を継いだ。そして1997年、和田さんに転機が。それは「ステーショナリープログラム」
というサイトを公開したことによる。趣味のサイトであったが、なかなか入手しにくい文房具をぜひ使ってみたいというサイトのファンの要望が強く、2年後にはオンラインショップ「信頼文具舗」をスタートさせた。

 信頼文具舗は、今でこそ発売とほぼ同時にラインアップに載るようだが、和田さんはあまりそのことを意識してはいない。ある程度使って、きちんと自分自で使い勝手を見てからショップとして扱うかどうか決めるからだという。



「クレールフォンテーヌ インデックスノート」
「クレールフォンテーヌ インデックスノート」 ページ側面がインデックス(見出し)加工された、手の込んだ作りのノートです。このインデックスを活用してもよし、使わずにながめても楽しいものです。
 
「コンパッソ・レオナルド・ジェニオ」「コンパッソ・レオナルド・ジェニオ」プロフェッショナル用途の黄金比デバイダーである。デバイダーであることを忘れさせるくらい美しい。
  「ラピッド
      ステープラー Supreme51」「ラピッド ステープラー Supreme51」 海外の見本市で見つけ、気に入って輸入代理店と交渉。信頼文具舗のためだけに輸入することになったという、オンリーワン商品。通常の針よりも一回り小さく、実際に使用してみると手に伝わる綴じ感が、忘れかけていた文房具の楽しさを蘇らせてくれる。機能もすばらしいが、機能一点張りではないという点がいい。 
「フィックスオン」+蛍光テープ
信頼文具舗ならではの提案、テープカッター「フィックスオン」+蛍光テープ「メモグラフ」。メーカーが違うこの2つ、使ってみるととても相性がいいということから、独自に組合せの提案をしている。そこに置かれていても良さが伝わらない文房具の代表のようなものだが、じわじわと愛用者が増えて、ヒット商品となっている。
  「ライツ・デスクオーガナイザー」人気が高く品薄になることもしばしばという「ライツ・デスクオーガナイザー」。ステーショナリープログラム(和田さんが個人的に展開してきた文房具のサイト)が提唱する「即時分類」の代表的ツール。しっかりととったマチ、重厚なカバー、そしてヨーロッパの文具ならではの鮮明な色合いが好評。

「私がおすすめできないものを扱うわけにはいかないので。 遺伝子の中に組み込まれて自然発生的に好きになっていったような文房具が、いつしか仕事になっていたわけです。だからこそ、きちんと吟味したいんですよ」

意外な手帳の使い方  

その和田さんの文房具に関する本『文房具を楽しく使う〜ノート・手帳篇』が2004年出版された。  

「愛読者カードを読むと、参考になったと書いてくださる方がたくさんいてうれしかったのですが、がっかりしたと正直に書かれているカードも。バリバリに 使いこなす方法が書いてあると思って買ってくださったんですね。この頃は『成功する人の手帳』といった類の手帳術の本がブームですから、期待されたのかも しれません」  

 たしかに、文房具売り場の手帳コーナーはかつてない活況である。手帳の使い方のノウハウ本は本屋だけでなく、文房具売り場にも積み上げられている。本に 掲載した手帳と仲良く並んでいるものも少なくない。
 
「(細かく時間の数字が並んだ)タイムスケジュールタイプ、カレンダータイプ、ウイークリータイプなどがありますが、なかでも売れているのはタイムスケ ジュールタイプでしょうか。これはスカスカだとある種の悩みが生じてしまう。なにもプランのないことに対する罪悪感とでもいいますか。実際は罪悪感なんか 持つ必要がないんです。そういう気持ちを1年間持ち続けるなんて、よくない。

 私は買ったらすぐに使い始めて、1カ月か2カ月、様子を見ることを提案しています。手帳は使ってみないとわからないのだから、相性を見るんです。もしも合 わないなと思ったら、買い替えます。1月から使い始めたとしたら、次のチャンスは4月です。ちゃんと4月始まりの手帳があるから焦らなくていい。うまくでき てます」


埋もれた文房具にエールをおくる  

 

「数年来の雑貨ブームによって文房具も注目されるようになりました。センスのいい文房具というと海外のものに注目が集まりますし、信頼文具舗でも多く 扱っています。でも、私としては日本の文房具にもっと頑張ってもらいたい、元気になってほしい。封筒で有名なライフというメーカーがあります。ここのA4 レポートパッドは、完璧ともいえるものです。細密に印刷された方眼紙は淡い色の筆記具を使っても方眼がジャマをしません。高校生のときに出合った文房具 ですが、こんなに良い物があまり知られていない」

 

「信頼文具舗」オーナー和田哲哉さんコンビニがどんな町にもあり、百円ショップも増え、 かつては学校の近くに必ずあった文房具屋がどんどん店をたたむなど、文房具をとりまく環境が大きく変わっている。  


「あるとき、インクの注文をいただいたんですね。職場のレポートを書くときにはこのインクでと、先輩からの申し送り事項だったそうです。そこではずっと あるメーカーのペンとインクの組合せを使っていると。取り寄せてみるとたしかにハッキリとした黒。ペンも注文いただいたのをきっかけに、信頼文具舗でも取り扱いコンスタントに売れています」



愛用のペン 愛用のペン。それぞれに愛着があり、用途によって使い分けている。
ロディアはフランスのブランド。5ミリ方眼罫線の用紙、用紙の上端はステープルで束ねてあり、マイクロカットと呼ばれる極めて細かいミシン目が入っている。このミシン目こそがロディアの魅力であり、その切り口の美しさは使う人を魅了する。和田さんはこれをToDoリストとして使っている。用件の頭に□をつけ「するべきこと」を1件1行ずつ書き出しておくのである。済んだら□にチェックを入れて、全部終わったらその用紙はカットして捨てる、というもの。 方眼罫線のメモ「ロディア」
和田さんのバッグの中にあるもの和田さんのバッグの中にあるもの。右から、名刺入れ、「ロディア」とメモカバー※、万年筆「アウロラ」ミニ・オプティマ、「モールスキン」メモポケッツ(領収書など、こまごましたものを入れる)、ダイアリー「クオバディス」に別注品のカバー、「クレールフォンテーヌ」リングノート、「ラミー」ダイアログ1とペンシース※
(革小物はすべてTRIM社製、※はともに和田さんのオリジナルデザイン)。

「じつは、うちが扱うまで、輸入元ももう取り扱いをやめようと言っていたぐらい、あまり動いていない商品だったようです。文房具はそこに置いてあるだけでは埋もれてしまって、良さが伝わらない。本当にいいものに出合うことが難しいかもしれないんですね。このペンとインクなどはわかりやすい例だと思います」

 「文房具は道具です。大人に大人の文房具があってしかるべきだし、それは人それぞれに違うと思うのですね。気に入った文房具を持つと、気持ちが豊かになります。毎日の生活が楽しくなります。筆記具でしたら、書く楽しみも生まれることでしょう。さらにそれらを閲覧性の高いペンスタンド(右下の写真参照)に並べれば、一目でわかるので、すぐに手に取るができます。書き味を保つためにも、できるだけ毎日
第一線で使うことをおすすめします」


 会社員時代は、会社と自宅、両方のデスクに同じ筆記具を同じように並べていたという。そうすることで、つねに気持ちよく仕事ができるから、と。これも「死蔵させずに第一線で使うコツ」だそうだ。

「信頼文具舗」オーナー和田哲哉さんMacは楽しい文房具

 和田さんは、ずっとMacを愛用している。

 「今から15年ほど前に親友が見せてくれまして。彼はいわゆる帰国子女で、SEをアメリカから持って帰ってきたんです。これはいいなあと。自分でプログラミングしなくても使えるなら、まさに文房具」と感じたそうである。

 説明書を読み下かなくても使える快適さ、デザインの良さ。以来ずっとMacがそばにあるという。

 「でも、どんなに進化したところで、僕の基本は紙なんですね。ペーパーレスにはならない。信頼文具舗を立ち上げたときも、びっしりとノートで構想を練って、それをウェブ上で具体化させただけです。複雑であればあるほど、この作業は大切だと思っています。これは昔からですね。書くことでどんどん頭の中で整理されていくし、足りないものもわかってくるでしょう。なんて楽しい作業なのかと」

 文房具とMacはじつにいい関係にあると言う。『文房具を楽しく使う〜筆記具篇』の中でも「文房具基点のひろがり」として「マッキントッシュ・ユーザーは文房具好き」についてふれている。お話をさらに伺うと「筆記具(をも含めた文房具)を気持ちよく使いたいという意識の高い人は、文房具だけでなく、その周辺を楽しむ人が多く、道具としてちゃんと使える物、いわば本物を求める傾向にある」と。

 「夢は、皆さんが履歴書に『趣味・文房具』と書けるレベルまで、文房具というジャンルを確立することですね。毎日使うものだからこそ、趣味レベルに引き上げたい。今は音楽鑑賞や読書と同レベルとはいきませんから」

 和田さんは、これからますます文房具への愛を深めていくに違いない。なにしろ「遺伝子に組み込まれているようなもの」なのだ。

                        Text by:佐分利 菜子

   




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